フクシマ後の日本を選ぶ

 多くの避難民を生み、広範囲にわたって環境を悪化させた福島原発事故。調査・検証委員会は事故を「人災」と断定しましたが、その「人災」をもたらした同じ政府や原子力ムラの人々が「大飯原発の再稼動」を決めました。反原発デモがすそ野を広げる一方で、脱原発後を想定した実効性の高い自然(再生可能)エネルギー論議も活発です。国会、民間、東電、政府による四つの事故調査報告書が出そろったいま、あらためて、新しい日本のあり方を提案する声に耳を傾けてみませんか。

NO NUKES 2012 ぼくらの未来ガイドブック

NO NUKES 2012 ぼくらの未来ガイドブック 著者:坂本龍一+編纂チーム 出版社:小学館スクウェア

いま何をすべきか考える

 YMOなどが音楽を通じて反・脱原発を訴えた7月のフェスティバル「NO NUKES 2012」に様々なかたちで参加・登場した人たちのメッセージが詰まった本。福島に暮らす吉田麻里香は「毎日、怒ること。毎日、祈ること」と記し、後藤正文や平野太一らはデモ行動やツイートを続けることの意味を語る。肥田舜太郎や鎌仲ひとみは内部被曝問題を憂い、小出裕章は根本的な「生き方」を問う。飯田哲也は自然エネルギー社会の実現を訴え、吉原毅は企業倫理を問い、坂本龍一は哲学者アドルノの言葉を元に「フクシマのあとに声を発しないことは野蛮である」と語る。全国若者会議の「反核年表」や参考文献・映画などの紹介もあり、いま何をすべきか、一望できる。

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第三次産業革命:原発後の次代へ、経済・政治・教育をどう変えていくか

第三次産業革命:原発後の次代へ、経済・政治・教育をどう変えていくか 著者:ジェレミー・リフキン、田沢恭子 出版社:インターシフト

持続可能な繁栄はこうして実現

 原子力エネルギーや化石燃料に依存せずに経済的繁栄が持続可能な社会を実現するにはどうすればよいか。著者はそのための経済計画を「第三次産業革命」と呼ぶ。ここではリスキーで高コスト体質の原発などは過去のもので、太陽や風などを利用した再生可能エネルギー(グリーン電力)を、各地の建築物などを利用した小型発電所で自給し、インターネット通信のように自由に地域間で行ききさせ共有する(エネルギーのインターネット)。重要なのは、この計画(理念)がすでにEUなどで承認され、「5本柱のインフラ」構築が進められている点だ。従来の資本主義や原子力ムラ的思考を超える構想は、アジア経済圏での実現性も高く、示唆に富む。著者は文明批評家で、欧州委員会などにアドバイザーとして協力している。独メルケル首相の顧問も務めた。

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脱原子力国家への道 (叢書 震災と社会)

脱原子力国家への道 (叢書 震災と社会) 著者:吉岡 斉 出版社:岩波書店

二つの核エネルギー廃する国に

 「脱原子力国家」とは、核燃料サイクルを含む原子力発電を廃止する国家を意味する。科学技術史を専門とする著者は、原子力発電を「生涯にわたり国家のすねをかじる自立能力のない技術」という。安全性と経済性の問題から脱原発を支持するが、もうひとつ、日本がウラン濃縮、核燃料再処理、高速増殖炉の技術を高め、核兵器を開発、製造、利用できる「潜在力」を発展させてきた歴史を重視する。日本の原子力の「民事利用」は米国の核戦略と結びつき、現在も「日米原子力協定」が横たわる。核の民事利用と軍事利用における障害をどう乗り越え、日本の脱原子力を実現するか。「脱原発」と共に取り組む「脱核燃料サイクル」のシナリオを「ソフトランディング」という現実的な視点から示す。

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日本は再生可能エネルギー大国になりうるか (ディスカヴァーサイエンス) (DISCOVER SCIENCE)

日本は再生可能エネルギー大国になりうるか (ディスカヴァーサイエンス) (DISCOVER SCIENCE) 著者:北澤 宏一 出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン

若者が目輝かせる日本の未来へ

 「原子力エネルギーのリスクとそれ以外のエネルギーのリスクを定量的にとらえ、それを客観的に議論できれば、国のエネルギーの未来を決断していくことができる」。福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)の委員長を務めた著者は、世界的に見ると再生可能エネルギーの投資総額がすでに原子力をはるかに超えたという。安全性の高い新エネルギー産業に向かうフクシマ後の流れ(新エネルギー革命)を検証しつつ、日本が「世界最大の対外純資産」をもとに省エネと新エネルギーに投資し、「エネルギー小国」から技術に裏付けられた「国産エネルギー大国」を選択するメリットを説く。それは「日本人が奮い立つような、若者たちが目を輝かすような目標」で、「機は熟して来ている」という。

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原発大国の真実―福島、フランス、ヨーロッパ、ポスト原発社会へ

原発大国の真実―福島、フランス、ヨーロッパ、ポスト原発社会へ 著者:コリーヌ ルパージュ、Corinne Lepage、大林 薫 出版社:長崎出版

出口なし、ツケは国民にまわす

 フランスは「原発帝国」と呼ばれる核エネルギー依存大国だが、フクシマ後、政財官学界とつながる「原子力ロビー」が自国の安全神話を流したものの、国民の「69%以上」が信用しなかったという。事故後来日し、日本の惨状を肌で感じた著者(フランスの元環境大臣で弁護士)は、母国の原子力ムラが展開してきた裏工作と秘密主義を名指しで暴き、核廃棄物処理や廃炉に必要な費用は乏しく、事故が起きた際の人的・環境的保障金も想定せず、結局は国民の血税が何重にも注がれざるを得ない現状を明かす。アレバの原子力ビジネスの窮状にも触れ、フランスがEUとの協調の中で脱原発に進む道筋を語る。「原発推進国はどこも安全よりカネ」の実態が伝わってくる。

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原発の、その先へ ミツバチ革命が始まる

原発の、その先へ ミツバチ革命が始まる 著者:鎌仲 ひとみ 出版社:集英社

新しい日本は女性が変える

 著者は映画監督。湾岸戦争で米軍が使用した劣化ウラン弾がイラクの子どもたちに白血病や甲状腺がんをもたらした内部被ばくの危険性に衝撃を受け、以後、ドキュメンタリー映画「ヒバクシャ 世界の終わりに」「六ヶ所村ラプソディー」「ミツバチの羽音と地球の回転」を制作。3・11後にあらためて原発と核のない社会の必要性を確信し、ムダを廃し地産地消の自然エネルギーでまかなえる新しい社会の構築を提唱する。その担い手の中心は、原子力ムラをつくった「男性性」ではなく、自然と生きる母親ら「女性性」の持ち主とその理解者とし、現在、動き出した彼女らの真剣な行動を「ミツバチ革命」と称している。

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エネルギー維新 -山口から日本を変える- ([テキスト])

エネルギー維新 -山口から日本を変える- ([テキスト]) 著者:飯田 哲也、眞人堂 出版社:出版共同流通株式会社

緑の経済改革を実現する構想

 原子力の専門家として長年、脱原発と地域分散型の再生可能エネルギーの必要性を説いてきた著者は、安全が十分に確認されないまま大飯原発の再稼動に踏み切った野田政権の決定を、既得権益を助長する「政治的な暴挙」と批判。ずさんな原子力行政を地方から変えると、出身地山口県の知事選に出馬するも次点で破れたが、本書は著者の脱原発後の考え方がコンパクトにまとめられている。特に、大阪維新の会のアドバイザー時代に取り組んだ「大阪のエネルギー中長期戦略」は、日本の今後のエネルギー政策や「若者からお年寄りまで、未来に希望を持てる社会」「環境と経済が一緒によくなる『緑の経済改革』」を実現するビジョンとして、あらためて興味深い。

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原発とは結局なんだったのか いま福島で生きる意味

原発とは結局なんだったのか いま福島で生きる意味 著者:清水 修二 出版社:東京新聞出版局

日本の無責任民主主義を問う

 著者は福島大教授。15万人以上の避難民を出し、約2万人の子どもが県外に転出した福島県だが、最大の「原発災害」は住民間の「心理的な亀裂」と指摘する。また県民に向けられた差別的言動を問いただし、電力生産地と消費地に横たわる非倫理的で経済合理性を欠く「電源三法」の廃止を主張する。国の原発政策をめぐっては「福島の視点をもって見れば、現政権のこの間の変節ぶりはほとんど暴力」と批判。国や地元をはじめ、日本人全般にもフクシマ後の新しい発想を求め、日本の「無責任民主主義」との決別を訴えている。

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原発民衆法廷1 ― 福島事故は犯罪だ!  東電・政府の刑事責任を問う ― (さんいちブックレット)

原発民衆法廷1 ― 福島事故は犯罪だ! 東電・政府の刑事責任を問う ― (さんいちブックレット) 著者:原発を問う民衆法廷実行委員会 出版社:三一書房

市民目線で事故責任を明確にする

 「原発民衆法廷」は、被害を受けた一般住民や法律家を含む支援者が、福島原発事故の「責任の所在」「被害者の権利」を明確にするために、国家や東電などの犯罪性を問う模擬裁判。本書は今年2月に東京で行われた「第1回公判」の主要な記録で、菅前首相、斑目原子力安全委員長、勝俣前東電会長らを「被告人」とし、福島の被災者、弁護士の河合弘之、哲学者の鵜飼哲ら多数の参加者が「申立人」「判事」「証人」「アミカスキュリエ」「検事」などの役割を務めた。「民衆法廷」は偏った「人民裁判」とする批判もあり、国家による裁判ではないために法的拘束力もないが、高まる反原発デモや新エネルギー論議の契機となった過酷事故を「国家による犯罪」とし、「国策がもたらした人災」を公的な事故調報告が出そろう前に市民目線で追及している。

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千夜千冊 番外録 3・11を読む

千夜千冊 番外録 3・11を読む 著者:松岡 正剛 出版社:平凡社

損傷の渦中から新哲学を掬う

 2011年3月11日は日本の表現者、研究者らにも多大な影響を及ぼした。巨大地震と原発事故という2つの悪夢は、現実ゆえにその思考(心)の根底を揺さぶらざるを得ず、多くの書物を生み出した。著書も例外ではなく、事故後「胸の津波をこらえつつ」、本を読むという形で、東北各地を単身でめぐるという形で思索を始めた。本書は「損傷の渦中から新哲学を掬(すく)ってくる」と決意した著者の足跡でもあり、最新の書物から、今日の悲惨な原発事故をすでに見抜いていた過去の名著まで、内外60冊の書評を収めてある。高木仁三郎著『原発事故はなぜくりかえすのか』など示唆に富む本が多く、この約1年半を冷静に振り返るための読書アーカイブとしても有益だ。

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