トレンドを提供 遊び心との出会いも 三省堂有楽町店

2017年04月03日

牧野優店長

三省堂書店有楽町店

牧野店長のおすすめ『蒼空の視覚 Super Blue3』

いち押し本「草の辞典」の陳列台

●「本が動くスピードが違う」

 午前10時、三省堂書店有楽町店が開店すると、客が次々と入ってくる。1階のフロアーを通り過ぎるように、さっと買って出ていく客もいれば、新刊コーナーに並ぶビジネス書や文芸書のページをめくったり、2階まで上がり、じっくり品定めする客もいる。
 大型書店が増えるなか、有楽町店は中規模クラス。しかし、客の多くは、「ここに来れば、本や雑誌の最新トレンドが分かる」という期待と信頼を持って訪れる。
 理由は、有楽町店が売れ筋の本を見抜く鋭いセンスを持っているからだ。とくに新刊コーナーに並ぶ本の売れ行きは、出版社や書店関係者も注目している。
 店長の牧野優(まきの・まさし)さんは、一昨年の秋、大阪から有楽町店に赴任した。以前の店もビジネス街にあったが、有楽町店は、「本の動くスピードが違う」と驚いたという。
「丸の内にも銀座にも近い有楽町は、日本の中心のような場所。つねに新しい情報を求める忙しいビジネスパーソンも多く、今の時代を映した本を素早く手に取っていただけるように気を配っています。ヒットしそうな本をいち早く見極め、揃えておかなければ、という緊張感はありますね」
 そのためにも新刊のニュースや販売数に目を光らせ、客の一歩先を読む情報収集は欠かせない。最近のビジネス書でいえば、ビジネススキルを上げる自己啓発本が人気だったが、昨年からは、人生の中での働き方を考えるライフシフトの本が売れているという。

●仕掛ける力

 そしてもう一つ、有楽町店の魅力になっているのが、「仕掛ける力」だ。
「ベストセラーばかりでは書店の個性が出ません。遊びも意識して品揃えしています」
 店内を見渡すと、確かに「おやっ?」と思う本がそこここに目につく。
 たとえば、『草の辞典』(雷鳥社)だ。美しい草花のイラストが薄いトレーシングペーパーのカバーに描かれ、思わず手に取ってみたくなる。
 店長のおすすめコーナーに並ぶのは、戦闘機の写真集『蒼空の視覚 Super Blue3』(廣済堂出版)や、科学者に地球外生命についてたずねた『宇宙には誰かいますか?』(河出書房新社)。こんな本もあるのか、と思うものばかりだ。
 「好きな本をおすすめしたくて書店員になった人間ばかりですから、お客様と本との出会いに担当者は知恵を絞っています。その仕掛けが功を奏し、有楽町店から火がついた本もたくさんあります」

●「ちょっととんがった書店」

 有楽町店はTwitterを使った発信も活発だ。サイン会も毎日のようにある。まずは足を運んでもらわなければ、店内の工夫を凝らしても、客と本との出会いは生まれないからだ。
「私たちが今、目指しているのは、ちょっととんがった書店です。それもマニア向けではなく、ふらっと立ち寄ったお客様にも面白いと思っていただける書店。マーケットの中心は抑えながら、リアル書店だからこそ出会える楽しさを提供していきたいのです」 (角田奈穂子)

三省堂書店有楽町店
東京都千代田区有楽町2−10−1 東京交通会館1−2階



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