読み返してぼろぼろになった『冒険スパイ小説ハンドブック』 三省堂書店有楽町店

2017年05月30日

『新・冒険スパイ小説ハンドブック』

『高い砦』

『鷲は舞い降りた』

『北壁の死闘』

■三省堂書店有楽町店店長 牧野優さん

 折角このようなコーナーに文章を書く機会をいただいているので、人気作家の新刊や話題の本を紹介した方がよいのかもしれませんが、そういう本はもっと紹介が上手い人があちこちで取り上げると思うので、今回は自分が今までの人生ですごく影響を受けた本を紹介しようと思います。
 といっても、純文学の名作でも人生に役立ちそうな賢人の書いた哲学書でもありません。その本とは『新・冒険スパイ小説ハンドブック』(早川書房・1,000円+税)。
絶版になっていた旧版を大幅リニューアルした新版が現在では入手可能です。
 自分はノンフィクションもフィクションも読むし、小説なら国内・国外のミステリー・SF・冒険スパイ小説などのいわゆるエンタメ系のものが好きで色々オススメしたい本はありますが、あれもこれもとなってしまって、何か一つに絞ることが非常に難しい。
 そこで、今まで生きてきて“一番読み返してボロボロになっている本”という基準で選ぶと、このハンドブックになるのです。
 ある程度の規模の書店の文庫コーナーに行けば棚に入っている『鷲は舞い降りた』や『女王陛下のユリシーズ号』や『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』のような有名作品は手に取りやすいですが、インターネットが無い自分が中高生の時には、書店の棚に入っていないものを知るには、このガイドブックだけが頼りでした。隅から隅までそれこそ穴が開くまで読み込んで、面白そうなものを注文して取り寄せて片っ端から読んだのでした。

■冒険小説とは何ぞや

 「冒険小説とは何ぞや」と聞かれると説明は難しいのですが、「主人公が数ある困難を知力・体力を駆使して乗り越えて、成長したり、心も傷を癒すことができたり、人間として成長する物語」といったところでしょうか。日常生活を描く私小説や、事件の謎を名探偵が解決する推理小説とは違うということです。誰でも知っている有名作で言えば、例えば『十五少年漂流記』でしょうか。
 代表的なもので自分も好きな作品は、第二次大戦時の壮絶な海での戦いを描く『女王陛下のユリシーズ号』『Uボート』、奇想天外な特殊作戦を描く『北壁の死闘』『鷲は舞い降りた』『アラスカ戦線』『ナヴァロンの要塞』、血沸き肉躍る海洋冒険小説の傑作『タイタニックを引き揚げろ』『ゴールデン・キール』『殺意の海へ』、強大な敵との絶望的な戦い『高い砦』『真夜中のデッドリミット』、冷戦時代の各国の丁々発止のスパイ戦を描く『闇の奥へ』『パンドラ抹殺文書』『消されかけた男』『ジャッカルの日』、大空での戦い『シャドー81』『ファイアフォックス』、孤高の主人公が印象的な『死にゆく者への祈り』『大穴』『深夜プラス1』『暗殺者』、日本人作家の傑作『エトロフ発緊急電』『ホワイトアウト』『亡国のイージス』… と、これは永遠に続くので切りがありません。
 小説は好きだけど、冒険小説的なものはちょっとと思っている人はモッタイナイです!このガイドブックを片手に、冒険・スパイ小説の世界に飛び込んでみて下さい。絶対に損はさせません。
 戦争が舞台だとそういった方面の知識が無くて読みにくいとか、銃器や航空機が登場すると読みにくいなどあるかもしれませんが、そういったものが全く登場しない本も沢山ありますし、今はスマホで簡単に画像検索できるので、読んでいて特に困ることは無いです。
 読み過ぎてボロボロになっている旧版は実家にあり、現在手元にないので詳しく解説できませんが、新版は旧版が発行された1992年以降の作品群と旧版に収録されなかった国内作品も対象とし、25年経った現在読んでも面白い作品を選ぶ座談会などの企画もあります。編集が全く変わっており、旧版にはあったが新版に収録されていないコーナーや書籍もあるので、旧版と新版どちらも目を通すことをオススメします。ただ旧版は品切れ絶版のため、古書店で探してもらうしかありませんが…
 ここ数年、入手困難だった作品がどんどん復刊されてうれしい限りですが、まだまだ埋もれた傑作が沢山あります。
 『ハイランダー号の悪夢』や『タイタニックを引き揚げろ』の復刊をお願いします!

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