ライバル多数、電車の読書

2017年11月01日

 

 

■三省堂書店有楽町店店長 牧野優さん
 最近、特に小説がなかなか読み進まない。自分は読書は主に通勤の電車の中でするのだけれど、ここ数年、行きは眠いし混んでいるので音楽を聴いているし、帰りは疲れているのでついついスマホでSNSなど見て時間を潰してしまう。

 本屋なのでもちろん本を読むことに抵抗は無いし、むしろ「読みたいもの」や「読まなければいけないもの」が列をなして待っている状態なので、どんどん読まないといけないのだけど、本って読み始めるのに結構パワーがいる。今は電車に乗っている時間が20数分しかなく、ノンフィクションやビジネス書だと途中で切れても良いので鞄から出して開くことが出来るのだけど、これが小説だと一瞬躊躇してしまう。この一瞬が命取りで、どうしようかななどと考えているうちに読む時間が10分くらいしか無くなってしまって、結局なんとなくtwitterとか見てしまう。

 以前、通勤時間が1時間くらいあった時は、今思うとかなりのペースで読んでいた。ただこれは、乗車時間が長いから読み進んだ訳ではなく、毎日“読み始める”から結果的に読み進むのだと思う。本をよく読む人は分かると思うけど、本は一旦読み始めると勢いがついてどんどん進む。この“読み始める”ことが最近ちょっと億劫になってきたのが、自分でも気になっている。スマホや携帯音楽プレーヤーが無かった学生時代や社会人になりたてのころは、休憩時間なども必ず本を持っていて少しでも時間があれば読んでいた。もちろん電車に乗るときも、少しでも時間があれば読んでいた。いろいろ便利になって良かったけど、現代は紙の本にとっては少し分が悪い状況かなと思う。

■電車の読書率、増えてる?
 自分は職業柄なのか電車に乗ると、他の乗客のスマホ率:読書率をついつい観察してしまう。書籍販売に関わっている自分でもなかなか本に取り掛かれないので、さもありなんという感じだけど、やはり圧倒的にスマホ・タブレットを見ている人が多い(電子書籍を読んでいるという人もいるけど、大勢に影響するほどではない)。

 数年前だと、電車に乗っていて何か見ている人は100%スマホを見ているという状況だったけど、最近心なしか紙の本を読んでいる人が増えてきた気がする。これは範囲の狭い「牧野調べ」のデータなので全く根拠は無いけど… テレビでの書籍紹介でヒットするものが増えてきたとか、車内広告を大々的に行う出版社が増えてきたとか、本屋大賞や芥川賞がメディアで大きく取り上げられて、本というものの存在を思い出した人が増えた結果だと思いたい。

 話が逸れてしまったけど、実は自分では移動中の読書にはルールがあって、読書するのは「通勤電車」か「地下鉄」の中だけなのである。旅行やお出かけで初めて乗る電車では必ず車窓を眺めているし、バスや自動車でも同じく景色を眺めている(本を読んでいると車酔いするし)。飛行機だと絶対に窓側の席を取って窓にへばりついて外を見ているので(雲の上の景色が大好きで何時間でも見ていられるし、上空から地上を見るのも好き)読書をする余地が無い。少し特殊なのが新幹線で、東海道新幹線の東京~新大阪間は乗り慣れていているので、景色を見ていないこともある。

 ということで、先日名古屋まで行ったときに往復で1冊読む気満々だったけど、音楽を聴きながらSNSを見てしまって、結局数ページしか進まず…。
 本はライバルが多くて大変だなということを実感して帰宅したのでした。
                                                                             

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