自閉症描いた漫画『光とともに…』 新装版刊行

2017年04月26日

駒林歩さん

秋田書店『光とともに…〜自閉症児を抱えて〜』

■280万部超のベストセラー
 発達障害が今よりもずっと社会に正しく理解されていなかった2000年、自閉症の子どもを持つ家族の物語『光とともに…〜自閉症児を抱えて〜』(戸部けいこ著 秋田書店刊)が月刊連載の漫画として始まった。漫画は大きな反響を呼び、2004年には篠原涼子さん主演でドラマ化。社会を巻き込む話題にもなり、自閉症への理解を深めるきっかけになった。
 現在も発達障害を理解するためのバイブル的存在として読者に愛され、単行本、文庫、電子書籍を合わせて280万部を越えるベストセラーになっている。そして連載開始から17年経った今、新書サイズの新装版が4月14日に発売された。既存版が今も版を重ねるなか、なぜ新装版を出すのか、秋田書店Eleganceイブ・フォアミセス編集部・編集主任の駒林歩(こまばやし・あゆみ)さん(38)に聞いた。

 ————単行本や電子書籍版も出版しながら、なぜ今、新装版を出すのでしょうか。
 駒林 一番の大きな理由は、『光とともに…』のタイトルはご存じでも、読んだことがない方が、まだまだたくさんいることが分かったからです。そこで、これまでの単行本版よりお求めやすい価格、手に取りやすい判型で再発行し、より多くの方たちに読んでいただきたいと考えました。

 ————未読の方が多いというのは、どのようなきっかけで分かったのですか。
 駒林 著者の戸部けいこ先生が、2010年に亡くなられたことが、きっかけの一つにあります。先生は病床でも『光とともに…』に取り組み、休載後も最後まで物語を描き続けようと力を尽くされました。でも、残念ながらそこから2話分のネーム(セリフやコマの割り振り、キャラクターの配置などを大まかに描いたもの)まで描いたところで亡くなられてしまって……。苦肉の策として単行本の最終巻にそのネームをそのまま掲載したのですが、漫画としては未完成です。先生は、ペン入れをした完成原稿で発表したかったでしょうし、私たちも「これでよかったのだろうか」と心残りでした。
 そこで、昨年、戸部けいこ先生と同期デビューで盟友でもある河崎芽衣先生にお願いして、ネームを完成原稿に仕上げていただき、「フォアミセス」3月号に掲載したのです。反響は大きく、ホームページで掲載の予告をしたときから、Twitterのリツイートやお気に入りの数が、それまでと比べものにならないくらい多かったのです。
 私たちは『光とともに…』が、読者にどれほど愛されてきたのか、漫画作品としていかに素晴らしいか、あらためて教えられることになりました。そして、感想の中に「初めて知った」「タイトルは知っていたけれど、読んだことがなかった」という声も少なくなかったのです。
 既に、連載開始から17年が経ち、乳幼児や小中学生の子どもを持つお母さんたちも代替わりしています。また、発達障害が広く知られるようになってきたせいか、自閉症のお子さんが特別なものではない時代になってきています。そんな社会の変化もあり、手に取りやすい新装版を出すことで、悩めるお母さんたちのサポートになるのではないか、という考えもありました。

 ————確かに『光とともに…』を読むと、自閉症のお子さんを育てるとはどういうことなのか、自閉症の方はどんな行動を取ることが多いのか、とてもよく分かりますね。
 駒林 ええ。私が作品の担当になったのは4年ほど前なので、連載を担当していた先輩編集者に当時の話を聞くこともあるのですが、戸部先生は本当に綿密に取材なさったそうです。また、発達障害には個人差があるので、光君の行動が必ずしもすべての自閉症に当てはまるわけではないという点にも、とても気を使っていらっしゃったのが、作品を読むとよく分かります。

 ————人間関係も豊かで、光君の成長を応援する人もいれば、そうでない人もいたり、とてもリアリティがありますね。
 駒林 そうなんです。光君の療育や成長が物語の中心ではあるのですが、子育ては学校や住環境など、周囲との関係も大きく影響します。障害の有無に関わらず、子育て中のお母さんたちが共感するエピソードもたくさんあるんです。

■「フォアミセス」でも特集
 ————『光とともに…』が掲載された「フォアミセス」は、社会的な問題を扱うことも多いそうですね。
 駒林 はい。乳がんや子どもの貧困、介護など、女性に身近な硬派のテーマを扱うこともあります。もちろん、漫画雑誌ですから、エンターテイメント性も考えながら物語を展開していますが、扱っているテーマは幅広いです。
 私自身、作品のために取材に同行することも多いのですが、初めて知ることもたくさんあり、勉強になります。たとえば、障害者の方やそのご家族たちと一緒に過ごすと、競争よりも共存を大切にしているので、空気が穏やかで居心地がよかったりするんです。そういうリアルな現実を漫画を通して伝えることで読者の気持ちや生活を豊かにできれば、と思いますね。
 発達障害のテーマも、新装版の『光とともに…』の発売を機に特集を組んでいます。「フォアミセス」6月号(5月2日発売予定)からは、Webサイトの「LITALICO 発達ナビ」(https://h-navi.jp)さんとコラボした記事企画「親子で発達障害のわたしが『光とともに…』に教わったこと」を1年間、連載することになっているんですよ。

 ————読者に長らく大切にされている『光とともに…』は幸せな作品ですね。
 駒林 本当にそう思います。秋田書店には人気作品がたくさんありますし、『光とともに…』以外にも、過去の人気作は会社の大切な資産です。自社コンテンツを新しい形で展開しながら、読者に漫画の面白さや魅力をもっとアピールしていきたいですね。(角田奈穂子)

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