自分に負けない私になる スタンフォード大・マクゴニガルさん

2013年02月13日

マクゴニガルさん=横関一浩撮影

 今年こそ――。そう決意して元旦に立てた「一年の計」、順調ですか? 先延ばししたり、やる気が出なかったりしていませんか。そんな人に向け、米スタンフォード大で実践的な授業をしている心理学者に、意志力を鍛えるコツを聞きました。
 指南役は同大講師のケリー・マクゴニガルさん(35)。著書「スタンフォードの自分を変える教室」(大和書房)は昨年10月に日本で出版され、3カ月足らずで45万部を突破。「精神論ではなく、科学的な視点から解き明かすのが新鮮だったようです」と編集者の三浦岳(たかし)さんはみる。
 「やるべきことはわかっているのに、やる気が出ない。ほかの誘惑に負けてしまう。どうしたらいいのか」。こんな記者の問いに、マクゴニガルさんは「意志の力を鍛える第一歩」として、「どんな時に衝動に負けたり、先延ばししたりするのか、自分を知ること」を挙げた。
 加えて、自分を責めないことも重要という。「罪悪感がなんの役にも立たないことは研究結果からも明らか。思いやりを持って自分を見つめることが大切です」。罪悪感からストレスを感じると、気晴らしをしたくなる。実験では前の晩に飲み過ぎた人ほど次の夜も飲み過ぎていた。「どうにでもなれ」という気持ちから、悪循環に陥りやすいという。
 大学の講座では、「注意力や欲望のコントロール」に関する脳科学や心理学などの最新の研究結果を説明する。意志力を鍛えるさまざまな手法を10週かけて試し、自分に合うものを探る体験型プログラムだ。学生のほか、「ダイエットが続かない」といった悩みを抱えた10~80代の一般市民も受講している。
 紹介される実験の一つが、「拷問テスト」。なかなか禁煙できない人が対象で、次のような流れだ。(1)たばこの箱を手にとりながめる(2)セロハンの包みをはがす(3)箱を開ける(4)香りを深く吸い込み、1本取り出してじっと見つめ、においをかぐ(5)たばこを口にくわえる(6)ライターをたばこに近づけるが、火はつけない――。手順を一つ進めるたび、数分間待たなければならないのがミソだ。
 ここで伝授されるのが「欲求の波を乗り越える」テクニック。吸いたくなったら、無理に考えをそらしたり、打ち消そうとしたりしない。吸いたい気持ちや、のどに緊張を感じるか、といった自身の反応を観察する。強い衝動が出たら、頭で大きな波をイメージし、抵抗するのでも、のみこまれるのでもなく、波に乗る自分の姿を想像してみる。こうしたやり方で欲求を制御しやすくなり、これを学んだグループは7日目に喫煙量が37%減った。酒やメール依存などほかの誘惑にも有効という。
 これは一例で、講座では科学に基づくさまざまな手法を実践している。受講生の8割超が、4週後に「意志力が強くなった」と答えたという。「誘惑にあふれた現代の私たちには、意志力の問題は共通の悩み。肝心なのは『科学者の目』で欲求を見つめること。自分をいたわりながら、本当に望むことを思い出して」とマクゴニガルさん。
 1日に東京で開かれた講演会には約500人が詰めかけ、若い世代から熱心な質問が相次ぐなど、関心の高さをうかがわせた。締めくくりは、この一言だった。「さあ、第一歩を始めてください」(佐々波幸子)
 ●マクゴニガルさん流の意志の力を発揮する主なコツ
・6時間以上の睡眠、ゆっくりした呼吸、公園を5分歩くなど適度な運動
・自分を責めない。自身に興味をもって「科学者の目」で観察
・筋トレのように小さなステップを重ねる
・本当の望みを思い出す。将来なりたい自分の姿を想像するのも有効

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