警察、独自色たっぷり 吉川英治文学新人賞 月村了衛氏

2013年04月17日

吉川英治文学新人賞を受けた月村了衛さん

 戦国時代が舞台の短編集と、近未来の警察小説。今年の吉川英治文学新人賞には毛色の異なる2作が選ばれた。『機龍警察 暗黒市場』(早川書房)の月村了衛(りょうえ=50)に作品にこめた思いを聞いた。
■人型兵器に情念込める
 受賞作は「機龍警察」シリーズの第3弾。前作『自爆条項』も今年、日本SF大賞を受けた。月村了衛は執筆動機を、「警察小説の枠組みを広げたかった」と話す。
 大量破壊兵器の衰退に伴い、人型軍用兵器「機甲兵装」が台頭した近未来。警視庁は機甲兵装を使った犯罪に対応するため、最新型の「龍機兵」を導入、搭乗員に、訳ありな3人の傭兵(ようへい)を雇う。
 「国際的金融の広がりのなか、犯罪も国を越え複雑になっている。でも、日本の警察組織では、世界の闇に対応できない。考えた結論が傭兵、そして機甲兵装でした」
 機甲兵装は犯罪に使われると同時に、そのものが密売の対象となる。国際的犯罪組織に立ち向かう日本警察だが、一枚岩ではない。新設された特捜部と旧来型の組織、外務省の思惑が事件のさなか、もつれあう。
 スケールの大きなシリーズに寄与しているのは、複雑な過去を持ち、国籍も異にする3人の傭兵だ。「自爆条項」ではアイルランドの元テロリスト・ライザの、「暗黒市場」ではロシアの敏腕警察官から身を落としたユーリの壮絶な過去と、現在の国際的事件が結びつき、展開する。
 国際情勢に詳しくはない。たとえばロシアの警察組織は、この数年で大きく変わった。最新情報はネットでもわからず、人づてに綿密な取材をつみ重ねた。
 物語のもう一つの魅力は、機甲兵装同士の詳細かつ壮絶な戦闘場面。こちらも本人、極端なメカ音痴。なんで、わざわざ面倒な兵器を生み出したのか?
 「機甲兵装は時代劇における刀なんです。作品設定で、刀のように人の情念を込められ、戦いの最後にカタルシスを描けるものは、何か。考えた結果が、人の思いにシンクロできる人型兵器でした」
 もともと時代小説好きで、中学生のころは吉川英治文庫をむさぼり読んだ。大学卒業後、アニメなどの脚本を書きながら、初めて出版社に持ち込んだ作品も剣豪もの。
 「読者の胸を躍らせる物語というのは、綿々と引き継がれてきた一定の枠組みがあります。脚本でも小説でも同じ。でも知識がないから、枠組みを埋めていくのが、毎回しんどいんですけれどね」

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