和合亮一が「廃炉詩篇」 ツイッター詩と一線

2013年05月15日

インタビューに答える詩人・和合亮一=竹谷俊之撮影

 東日本大震災後の福島から発信を続ける詩人、和合亮一(44)が新詩集『廃炉詩篇(はいろしへん)』(思潮社)を出版した。ツイッターを通じた平易な言葉で多数の支持を集めた和合だが、本作では一転して、徹底的に暗喩を駆使し、哀切な叙情と力強さに満ちた詩的世界をつくりあげた。
 〈波打ち際のヤドカリは/ハサミをふりあげて涙を流す〉。「馥郁(ふくいく)たる火を」と題された詩は、死に覆われた世界に生きる者たちの姿を、乾いた笑いとともにリリカルに描く。
 〈アコヤガイが水際に阿呆(あほう)のように置かれている/笑うなら笑えばいい〉〈山や川や海や詩が眠らないように/死もまた眠らないのだ〉
 震災から2年が過ぎ、被災地の外では記憶の風化が進む。「被災地に生きる私たちには棄(す)てられた民だという不安がある」と和合はいう。福島に流れる時間は、荒廃や死がつきまとう。警戒区域に指定された原発から20キロ圏内の街で静かに壊れていく家。誰もいない公園の真ん中に立つモニタリングポスト。「時間そのものを比喩にしたかった」と和合はいう。
 ツイッターでつぶやいてきた詩は「放射能が降っています。静かな夜です」という句に代表されるように直接的な表現を使った。フォロワーが2万人超になるなど広く支持を集めた一方で、「これは詩ではない」などと批判もされた。震災後に刊行した詩集も、詩壇の各賞で最終候補に残りながら受賞は逃しつづけた。
 今回の作品は、ツイッターの詩とは全く別の制作過程をとり、1編について、1、2カ月をかけて推敲(すいこう)を重ねた。「震災直後はツイッター経由でのフロー(流出)の言葉が必要だったが、今は人々の記憶の風化に対抗するためにも重くて強いストック(蓄積)の言葉が重要」と和合はいう。
 ツイッターで発信しつづけた経験はどんな意味があったのか。「自分を含め現代詩はメタファー(暗喩)を連ねた難解な観念の世界を突き詰めたことで表現の可能性をかえって狭めた面があった。多くの人に見られながら言葉を発したことで自分の中でいい意味で何かが壊れ、今回、メタファーでリアルな世界を生み出す試みに踏み出せた」
 『廃炉詩篇』はアマゾンのオンデマンド印刷版が先行発売中。通常の単行本の書店での発売は6月上旬の予定で、予約受け付け中という。問い合わせは思潮社編集部(03・3267・8141)まで。

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