米谷ふみ子 エッセー集 米国流わがままのススメ

2013年06月19日

作家・米谷ふみ子

 「普通のアメリカ人」の普通ではない人生を、作家米谷(こめたに)ふみ子(82)が切り取ったエッセー集『ロサンゼルスの愛すべきダンス仲間』(マガジンハウス)が刊行された。米国在住50年以上になる米谷による「わがままのススメ」でもある。
 米谷はかつてエッセー集『けったいなアメリカ人』(00年)で、ノーマン・メイラーやエリア・カザンら著名人との思い出をつづった。ヘンリー・ミラーのブルックリンなまりをけっさくな大阪弁で訳した。
 今回、俎上(そじょう)に上げたのは無名のダンス仲間。平均年齢80歳を超えるが、「楽観的で積極的に生活に挑んでいる」。反核運動を支持する100歳のモーリ、米谷に発音を学び直せと助言する92歳のソフィアらだ。83歳のアデルは、脳障害があった米谷の次男の担任教師で、日本語なまりの強い英語もわかってくれた親友だ。
 戦争をくぐってきた人も多い。ジムは従軍中の1952年にネバダ州で原爆実験の「モルモット」になり、88歳で亡くなった。朝鮮戦争の時、徒歩で逃げ回ったという韓国系のクリスティーンは、看護を学ぶために渡米し牧師の妻になった。ナチから逃げて流浪の民となり、学校にはほとんど行っていないスポラは5カ国語を話せる。
 大阪市生まれの米谷も、空襲で町を逃げ回った経験がある。本書は、ユーモアを交えて個々の人生を描き出しながら、反戦と反核の信条で貫かれている。
 「日本国憲法は米国が作ったと批判する人がいるが、ヨソからもらったモノでも美しいものは美しい。それを捨てて、今の米国のまねをする気? 平和が最も世の中を栄えさせることは、今の日本をみればわかるのに」。米国では貧困層が軍隊に入ることが少なくない。そして、身体的にも精神的にもダメージを負った傷病兵への補償費が膨大で、教育費や医療費を圧迫しているという。
 はっきりモノを言うのが米国流だ。60年に絵の勉強のために渡米した米谷は、仲間から我慢するな、主張せよと言われた。「日本ではわがままは悪いと片付けられる。でもそれは、上の者が下の者を御しやすくするためだと気がついた」
 上下を形づくる敬語を無くした方がいいというのも持論だ。「原発事故も薬害事件も、組織の上層部の不始末が多いから、下の者がはっきりとものを言えず、問題がややこしくなるのでは」。究極のわがままは、全人類の幸せに向かっているのだ。

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