絵本作家・加古里子さんに聞く からすのパンやさん、40年ぶり続編4冊

2013年09月24日

加古里子さん=神奈川県藤沢市

 パンダパンにてんぐパン、ひこうきパンもおいしそう――。子どもたちに大人気の絵本「からすのパンやさん」の続編4冊が今年、40年の時を経て出版されました。続編のこと、長いあいだ絵本を通して向き合ってきた子どもたちのこと。作者の加古里子(かこさとし)さん(87)に聞きました。
 ■伝えたい「みんな特別な子」
 ――続編は、パン屋さん夫婦の成長した四つ子を、それぞれ主人公とした4冊です
 「パンやさん」を出してすぐのころから「続きを描いて」という子どもたちの声は届いていました。続きで落胆させたくない。アイデアを出しては自分でダメと決める繰り返しでした。こりゃいかん、子どもたちが大人になってしまった、と本格的に考えるうち、4羽を食べ物屋にするアイデアが浮かびました。
 ――なぜ食べ物なのでしょう?
 絵本を読む子どもたちはこれから生きて、伸びていかなければならない存在です。そのために大切なのは食べること。「からすのパンやさん」も、昭和の初めに子どもだった僕が、文房具屋さんで買って食べたジャムたっぷりのパンがおいしかったことを原点に生まれた絵本です。
 ――作家生活は半世紀を超え、500冊以上の著書があります
 働き者だった父の影響でしょうね。貧乏でしたが、よく物を考える人で、生きることは働くことと教えられました。でも、ある子が好きになってくれた絵本も、違う子どもも好きとは限らない。同じような子は一人もいない。みな、特別の歩みをしていく特別な子ですから。
 ――子どもへの目線はどこで培ったものですか
 1950年から20年余り、子ども会の活動にはまりこみました。子どもたちは、おもしろくない紙芝居だとぷいっといなくなる。おもしろいと「見てやるよ」。正直な反応に学び、鍛えられました。
 大人は「子どもに難しいことはわからない」と言います。でも、それは違う。昆虫好きや電車好きなど、5歳くらいになると子ども向けの本に満足できなくなる子がいます。昆虫だけでも、テントウムシ、チョウなど20種類くらいに細分化し、わかりやすく伝える本を用意してあげたいものです。好奇心を満たすことが子どもの力になります。
 ――この半世紀で社会は大きく変わりました
 テレビ、パソコン、携帯電話が普及しましたが、絵本の形はこれから100年でも変わらないでしょう。赤ちゃんがなめても、少々踏んづけても壊れず、気に入ったら一緒にねんねできる。子どもにとって最高の形です。
 最近の親御さんは、子どものことをすべてきっちり見て教育しないと賢い子に育たない、と思っているように感じます。でも、そうではないんですよ。どんなにすばらしい学校、先生でも、本人に気構えがないと意味がない。
 要はやる気。では、やる気はどう育つか。親が、自分のことをしっかりすることです。子どもは親の背を見て育つ。お父さん、お母さん。毎日を精いっぱい、生きてください。     *
 1926年、福井県生まれ。「だるまちゃんとてんぐちゃん」などの絵本や、「伝承遊び考」など子どもをめぐる著書多数。今年4月、福井県越前市に「かこさとしふるさと絵本館」がオープンした。今月中旬には、「どろぼうがっこう」の続編2冊も40年ぶりに出版された。神奈川県藤沢市在住。
 ◆「からすのパンやさん」
 パン屋を営むカラスの夫婦のもとに4羽の赤ちゃんが生まれ、夫婦は子育てに追われながらもいろいろな形の楽しいパンを焼き、お店は大繁盛――。73年、偕成社から発行された絵本は、毎年5万部が売れるロングセラー。これまでに220万部が出版された。
 続編は「からすのやおやさん」「からすのおかしやさん」など4冊。

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