「ぐりとぐら」誕生50年 作者・中川李枝子が語る秘話

2013年10月30日

作家の中川李枝子

 双子の野ねずみの楽しい日常を描いた絵本『ぐりとぐら』(福音館書店)が1963年に誕生してから50年。13カ国で翻訳・出版され、シリーズ全体の累計販売数は約2400万部に及ぶ。すぐれた児童文学の条件とは何か。作者の中川李枝子(78)に聞いた。
 第1作の『ぐりとぐら』は、中川が雑誌「母の友」の63年6月号に書き下ろした挿絵つきの物語として誕生した。このときの題は「たまご」だった。挿絵は、中川の妹で、当時大学生だった山脇(当時は旧姓・大村)百合子が担当。63年11月に題も変えて絵本として刊行された。
 当時、中川は東京・世田谷の保育園で保育士として働いていた。「今日は子どもたちと何して遊ぼうか」と考える日々。ホットケーキを焼いて野原でみんなで食べたら、子どもたちは大興奮。そこで、大きな卵を野外で見つけ、それを材料にカステラを作り、みんなで食べるという物語をまず考えた。卵との対比で主人公は小さい方が良いと、野ねずみにした。「ぐり」「ぐら」という名前は、フランス語の絵本にあった「グリッグルグラ」というかけ声のような音から考えた。
 「登場人物の名前はとても大事。子どもに分かる言葉を使って、一つの個性や性格がにじみ出る名前にしないといけない」
 山脇は、絵を描くための参考に、博物館の研究室でねずみの標本を見せてもらった。標本の中からオレンジ色のねずみを見つけ出し、モデルにした。
 中川はすぐれた芸術の条件として、トルストイが挙げた「新鮮」「誠実」「明快」を紹介。「子ども向きでも、まず『事件』を起こし、驚かさないといけない。次はどうなるのかとスリル、新鮮さが必要」と指摘する。「ぐりとぐら」シリーズでは、うみぼうずから突然手紙が届いたり、手の長いうさぎが2人の帽子をとったりと、たしかに事件が起きる。
 中川は、子どもたちを一日中、じっと観察したことがある。「想像力が豊かなので、遊びを通じて、彼らの頭の中の世界はどんどん広がっていく」
 シリーズは小型絵本やかるたなどもあるが、主要な絵本はわずか7冊にとどまる。「無理に書かずに来た」という。商業的なキャラクタービジネスなども断ってきた。その禁欲ゆえに、質の高さを保ってきた面もある。

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