現代ロシアを批判 長編「親衛隊士の日」ソローキン来日

2013年11月06日

ロシアの作家ウラジーミル・ソローキン=河出書房新社提供

 現代ロシア文学を代表する作家ウラジーミル・ソローキンが来日、東京・新宿で、ロシアへの思いや創作姿勢について語った。暴走する権力者たちを戯画化した長編『親衛隊士の日』(河出書房新社)が日本で出たばかり。翻訳家の柳下毅一郎と本書を訳した松下隆志が聞き手になった。
 『親衛隊士の日』は、近未来のロシアが舞台だが、16世紀の暴君イワン雷帝時代のような設定。帝政がよみがえり、まるでならず者集団の親衛隊が、貴族の屋敷を奇襲する。「秘密警察出身者たちが牛耳る現代のロシアと当時の専制政治が重なるのです。ナショナリストたちの夢が実現したと仮定して描いた」と話す。
 現代ロシア社会への風刺が痛烈だ。これまでも「社会的、集団的な恐怖をテーマにしてきた」。
 今年6月にロシアで成立し物議をかもした同性愛宣伝禁止法にふれ、「最近、同性愛への嫌悪が国中に偏執狂的にはびこっている。このような愚かな法律が採択されるたび、友人に、君の作品通りになっていると指摘される。作家としては満足するが、ロシア国民としては心底がっかりしている」と語った。
 1955生まれ。ソ連時代、社会主義リアリズムをパロディー化する表現者集団に入り、小説を書くようになった。以降、社会的タブーとみなされるテーマを扱ってきた。99年に発表、邦訳もある『青い脂』は、愛欲(スターリンとフルシチョフのセックスシーンなど)や虐殺などの過激な表現もあり、プーチン派の団体にバッシングされた。
 「『青い脂』を書くことは、人間の腸を見て内臓の匂いを感じとるような試みだった。主観だが、20世紀は全体主義的イデオロギーのもとに過ぎたのではないかと思っている。社会主義リアリズムも含めたすべてのイデオロギーをひっくりかえそうとしたのがこの小説」
 1作ごとに作風や文体を変えてきた。国際的にも評価が高まっている。今年は英国の国際ブッカー賞にもノミネートされた。「作家は一つ一つの作品で何かを発明すべきだと思っています。同じような作品を書けと言われたら、私は死ぬかもしれない」
(編集委員・吉村千彰)

親衛隊士の日

著者:ウラジーミル・ソローキン、松下 隆志
出版社:河出書房新社

表紙画像

関連記事

ページトップへ戻る