異国描写、謎解きに深み 梓崎優さん

2013年11月06日

 異国の空気感を巧みに織り込んだデビュー作『叫びと祈り』が話題になってから3年、初長編『リバーサイド・チルドレン』(東京創元社)を出した。謎解きの魅力だけにとどまらず、ウィリアム・ゴールディング『蠅(はえ)の王』などに連なる少年サバイバルものの力作となっている。
 舞台はカンボジア。訳あってストリートチルドレンとなった日本人少年は、街の人々に忌み嫌われながらも、信頼できる仲間とゴミ山をあさり、日銭を稼いで生きていた。しかし、ある日、仲間の一人が殺される。数日後にはまた一人。
 執筆のきっかけは幼少期を過ごしたマレーシア。風景に溶け込んでいたストリートチルドレンの存在が、年を経るにつれ、気にかかってきた。日本で見ることのない彼らの背後にどんな物語があったのか……。
 「どんな悲惨な環境でも人は生きないといけない。さらに、ただ環境に順応するのではなく、生き抜いた人には、それがゆえに得られる強さがあるのではないかと思ったんです」
 謎解き要素に深みを与えているのが、ゴミ山や川沿いの掘っ立て小屋などの生活描写だ。かの地の熱気や臭いが伝わってくる。でも、カンボジアには行ったことがない。
 デビュー作もそうだった。砂漠やジャングルなど転々と舞台を替えながら、異国の風土とトリックを融合し、最後に伏線を回収する連作短編。こちらも多くが未踏の地だ。
 「行かないことで想像力が働くこともあると思うんです。もともとトリックをむき出しにすることにためらいがあって、より物語性を出すために海外を舞台にした面があります」
 小説を書き始めたのは7年ほど前。高校の同窓会に出たときの、もやもやした気分を文章にしたくなった。もともと綾辻行人や西澤保彦らのミステリーに親しんできたこともあり、東京創元社のミステリー新人賞に応募したが落選。翌年、再応募した別の短編が受賞し、『叫びと祈り』の第1話となった。
 定時勤務の会社員。ユニセックスなペンネームも顔出ししないのも、「あまり作家が前に出ると物語によくない」から。次作は絵画をめぐる物語を構想している。たぶん舞台は異国で。

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