米音楽界の二の舞いに警鐘 電子書籍の「流通の支配」

2013年11月13日

KADOKAWAの角川歴彦会長

 日本でも、徐々に広まりつつある電子書籍。昨年、アマゾンなど米IT大手と配信契約を結んだ出版社KADOKAWAの角川歴彦(つぐひこ)会長(70)は、米大手を重要なビジネスパートナーと見る一方、「流通の支配」に警鐘を鳴らしている。
 1年以上にわたったアマゾン、グーグル、アップルなどとの契約交渉は「極めてハードだった」。直面したのは、米国流の市場の論理だ。「出版を続けるのが難しいほど厳しい価格条件」の提示から始まり、作品を「ブラックボックス」状のサーバーに預かって無限に利用できるような権利なども求められたという。
 「彼らにとって大事なのは利益と、消費者から訴えられないこと。日本の出版社が大切にする作家との信頼関係など理解しない」
 電子書籍は出版社が価格を決められる再販制度の対象でないこともあり、アマゾンなどでは「既に値崩れが始まっている」。でも、価格が安くなるのは出版社には都合が悪くても、消費者にとっては歓迎すべきことでは?
 角川会長は「米国の音楽産業の衰退を見てほしい」と話す。昨年の米国の音楽ソフトの売上高は、日本に抜かれ2位に転落(国際レコード産業連盟調べ)。アップルを代表とする巨大IT企業が流通を一手に握り、街のレコード店が次々廃業した結果、「ボブ・ディランすら、99セントでバラ売りされる消耗品になってしまったからだ」。
 「消費者が得する『チープ革命』と言われるが、本当に得をしているのは流通を握る巨大IT企業。著作者は貧しくなる一方だ」。文化のつくり手への対価が減ると、結果的に文化の再生産のサイクルが揺らいでしまうと懸念する。
 MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボの伊藤穣一所長と対談した際、「これから勝つのは著作権を持っている側ではなく、アマゾン、グーグル、アップルといった流通を押さえる『モノポリー(独占)者』だ」と指摘されたという。「モノポリー者」という言葉は、顧客を囲い込み、流通ルートを支配する者を意味している。
 「日本の出版産業も、米国の音楽産業のように流通を支配されたら、(価格条件も含め)言いなりになるしかなくなる。もしそうなった時、モノポリー者が日本の文化の将来を考える立場にないことは認識しておくべきだ」
 当面の対策で挙げるのは「出版界が総力を挙げて、街の書店を支援すること」。アマゾンの翌日配送に対抗して、注文の翌日に書店の店頭で受け取れるようにするなど、消費者の支持を得るためにできることはまだあると指摘する。
 『グーグル、アップルに負けない著作権法』(角川EPUB選書)を10月に出版。「ギャング」と呼ぶ米企業への対抗策を考える日々だ。

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