原発、未来人を脅かす 「応用倫理学」を出版

2013年11月24日

「教養としての応用倫理学」を編集した盛永審一郎教授

■富山大学院医学薬学研究部 盛永審一郎教授(65)
 「科学技術の発達により、カントに代表される近代の倫理学では対応できない社会問題が起きている。倫理学も変わらないといけない時がきている」
 現代が直面する社会問題について考えてもらおうと、上智大学外国語学部の浅見昇吾教授と共に「教養としての応用倫理学」(丸善出版)を編集し、10月に出版した。「私たちがいかに生きるべきかを考える羅針盤になれば」と言う。
 倫理学や哲学に興味を持ったのは、高校1年生の時だった。父親が徐々に体の機能が衰えていく病で亡くなり、そばにいても何もできない無力さを感じた。生きる気力を失い、すがるように手にしたのがニーチェの本だった。大学でも哲学を専攻。研究者となり、40代で哲学者ハンス・ヨナス(1903~1993)の論文集に出会った。
 ヨナスは「未来倫理」を提唱。現代の私たちの行為は未来の人に意図せずに影響を与えているため、私たちには未来の人への責任が生じるという考え方を示しており、感銘を受けた。
 例えば、原発について考える場合「カントの考え方では現代で役に立っているため『良いといえる』が、ヨナスの未来倫理にのっとると、原発は未来の人の生存を脅かすものであり、『良いとはいえない』」と解説する。
 本書では、大学教授ら21人が環境倫理や生命倫理、動物倫理などについて執筆し、ヨナスらの考え方を紹介。本の帯では「宇宙船地球号の操縦マニュアルはあるか」と問いかけた。生殖医療や放射性廃棄物の問題など、急速な科学技術の進歩で「人間のあり方が変わろうとしている」中で、立ち止まって考えたり歯止めをかけたりするための原理や原則が必要なのではないか、本を通して考えてもらいたいという。(大坪実佳子)

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