ダダモレ民主主義に希望 豪のジョン・キーン教授

2013年12月11日

ジョン・キーン豪シドニー大教授=4日、東京・日比谷の日本記者クラブ

 特定秘密保護法が成立した先週、豪シドニー大の政治学者が来日し、民主主義について大学などで精力的に講演し続けた。『デモクラシーの生と死』という上下巻計1千ページ近い大著が、11月にみすず書房から出版(森本醇訳)されたばかりのジョン・キーン教授だ。
 とかく欧米的な価値として語られる民主主義の歴史を、真に民主的で世界的な視点から書き直したのが『デモクラシーの生と死』(2009年に原著刊行)だ。著者は猪口孝・新潟県立大学長ら日本の政治学者との交流も深く、翻訳を機に早稲田、慶応、法政、同志社の各大学と日本記者クラブで語った。
 上下2段組みでとにかく長い本だが、民主主義を一つの希望ととらえ、南米やインドなど古今東西の事例を生き生きと紹介し退屈させない。
 執筆のため世界中を巡り、10年かけたという。「古典になる本が書きたかった。オデッセー(古代ギリシャの長編叙事詩)のような長い旅で、楽しかった」と語る。
 『生と死』の基本的な時代区分は、民主主義は「集会デモクラシー」から「代表デモクラシー」へと移り、現代を「モニタリング・デモクラシー」の時代とみることだ。モニタリングは見るという意味で、若い出席者が多かった法政大では「ダダモレ」デモクラシーと日本語で説明した。
 集会デモクラシーがギリシャ発祥という定型を、考古学の成果を基にメソポタミアまでさかのぼるなど、常識を打ち破りながら代表デモクラシー、モニタリング・デモクラシーへと書き進めた。
 日本記者クラブでの講演では、特定秘密保護法案に言及しながらモニタリング・デモクラシーを丁寧に説明した。
 発生は1945年ごろ。ヒトラーの登場によって代表デモクラシーが機能不全に陥った後に、政党や議会、行政による権力の行使を、何らかの組織やネットワークが監視するようになった。
 キーン教授は「戦後の重要な課題を提起したのは政党や政府ではなく、市民のモニタリング組織だった」とみる。例えば黒人の公民権や女性の権利、地球温暖化や貧困対策などだ。それが構造的に弱体化した代表デモクラシーを補完してきた。
 モニタリング組織は、インターネットなどの通信革命で近年、より大きな力を得た。一方で政府は電子情報を管理しきれず、ジュリアン・アサンジュやエドワード・スノーデンによって「ダダモレ」事件が続発した。
 対抗するように、モニタリング組織を沈黙させようという動きも現れている。特定秘密保護法もその一つだろう。講演後の質疑応答でキーン教授は「日本は大事な転換点にあり、不安を感じる。ただ、日本のスノーデンは現れるかなとも考える。秘密を扱う組織が大きくなり、各国がより連携すれば、リークは当たり前になるだろう」と語った。

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