木田元「技術の正体」、対訳で肉薄を 気鋭の翻訳家エメリック氏

2013年12月17日

翻訳家マイケル・エメリック

 哲学者木田元のエッセーを気鋭の翻訳家マイケル・エメリックが英訳した。原文と訳文を並べて載せる『対訳 技術の正体 The True Nature of Technology』(デコ)。口コミで人気を広げている。「原文と英訳の両方をたどり、じっくりと付き合ってほしい」と訳者は語る。
 『技術の正体』は、縦17センチ、横13センチ足らずの小ぶりな判型。左ページに日本語、右ページに英訳文があり、勉強にもなる一冊だ。序文と3本のエッセーを収録する。
 表題作は1993年発表で、人間の理性より技術の方が起源が古く、理性で技術をコントロールできるというのは思い上がりという趣旨だ。福島第一原発の事故後に読む意義は深い。
 エメリックは「内容は難しいが、テーブルを挟んで語りかけるような雰囲気がある。SFなどにも描かれて、みなうすうす感じていた、技術はコントロールできないという不安が、論理的にわかりやすく書かれている。遠い世界の哲学ではないと感じた」と話す。
 題の訳について「『True Nature』は『正体』『本質』という意味ですが、人間の技術は自然(Nature)の所産であるという木田先生の考えを反映したつもり」と説明する。
 「Essenceと訳しそうなところだが、ニュアンスのとらえ方が素晴らしい。安易な訳とは呼吸が違う」。西洋哲学の書を平易な日本語に訳すことで定評のある木田が、太鼓判を押す。
 エメリックは75年、ニューヨーク生まれ。源氏物語の研究者でカリフォルニア大ロサンゼルス校上級准教授。高橋源一郎やよしもとばなな、古川日出男や井上靖ら現代日本文学の英訳を手がけている。川上弘美著『真鶴』の訳で、10年度の日米友好基金日本文学翻訳賞を受賞した。
 『真鶴』は、英語にない文体を作る必要があったという。「川上さんは漢字とひらがなの使い分けなど、独特の持ち味をなす日本語の使い手。直訳してもしょうがない。全体として同じような雰囲気を作り上げることができれば、訳文も生き生きすると思った」
 そんな翻訳家の悩みは、日本語の本を読んでいる時に、適合する英語が聞こえてくること。「楽しみで読書している時は、本当に邪魔なんです」

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