小説書きながら「思考がのびていく」 彩瀬まるさん

2014年03月07日

作家・彩瀬まるさん

 「女による女のためのR―18文学賞」から誕生した書き手の活躍がめざましい。その一人が2010年にデビューした彩瀬(あや・せ)まる(28)。『骨を彩る』(幻冬舎)は、「喪失」というテーマで各編をつないだ書き下ろしの連作短編集だ。
 夢の中で死んだ妻の指が1本ずつ消えてゆく「指のたより」。恩師の葬儀で同級生が集まるなか、不在の友を思う「古生代のバームロール」。しっとりと落ち着いた文章で、人間の弱さを描く。最終章「やわらかい骨」は幼くして母を亡くした中学生の少女が転校生との出会いを機に、抑えていた感情と向き合う。
 父と二人暮らしの少女は周りの大人の気遣いや配慮に反発心を抱く。自身、15歳で母を失った。「書きながら、母を亡くした直後のいらいらしていた自分を思い出していました。言語化するのに、この年齢まで時間がかかりました」
 彩瀬が注目されたのは東日本大震災を描いたノンフィクション『暗い夜、星を数えて』(新潮社)。震災時に福島県新地町にいた。電車内で揺れにあい、気ままな一人旅は一変する。津波から逃れ、自宅に帰るすべを失い、原発事故の不安におびえた5日間のルポは、被災した人々の不安と、互いに支えあう温かさがある。「どこまで書くか悩みました。あつれきや心乱れた様子も書いたのはこういう状況にあったんだと残しておきたかったから」
 父の仕事の都合で、幼少期をスーダンとアメリカで過ごした。中2で書いた初めての小説は、人々に生まれつき身分階級を決めるあざがある世界が舞台のファンタジー。「生まれながらの貧富って何だろうと、自分の中でわからないことを小説で消化しようとしていたのだと思う」
 それは今も変わらない。小説を書きながら「思考がのびていく」という感覚がある。今作は「喪失は致命傷ではないという思いが強くなった。生きた先に、それを補うものを獲得できるかもしれない、と」。(中村真理子)

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