淺川継太さん 人間性回復に挑んだ「身感覚系」

2014年06月20日

作家・淺川継太

(あさかわけいた 34歳)

 異様な出来事を描きながら清らかな印象さえ与える作家、淺川継太が作品集『ある日の結婚』(講談社)を刊行した。初の単行本。中学生の頃から夢みた「作家」と呼ばれ、照れつつ「うれしい」。
 群像新人賞を受けたデビュー作「朝が止まる」と、ドラマ化された「水を預かる」も収める。表題作は「結婚する必要がないくらいの結びつきと、そんな2人の体の動きを書きたかった」。
 出勤途中に駅構内で毎朝すれ違う男女が出会い、結ばれる。最初は普通の恋愛だが、二人は激しい交わりの末、「良い匂いがする」互いの体の部分をかじりあうようになる。〈孤独の絶縁体として、彼女の肉を取り込みたい、取り込まなければならない、その叫びがぼくの淫(みだ)らな咀嚼(そしゃく)の芯だった〉。食べても血は出ず、痕に薄皮が張るが、体は着々と変形していく。行き着く果ては……。
 会社員で、出勤前の早朝に執筆する。互いを食べる発想は、朝食前の激しい空腹から生まれた。
 身体へのこだわりは、人間存在への愛情とあこがれの表現だという。「経済活動の中で、人は労働の単位や役割で語られる。機能じゃない、素朴にきれいだから良いといいたい。一部分でもいいじゃないですか。体を大切にすることが、人間性を取り戻すことだと思うんです」
 好きな作家は全作を読む。中でも大江健三郎や安部公房に影響を受け、川端康成に心酔している。新感覚派の代表の川端にちなみ、身感覚系とでもいおうか。
 中2の時、推理小説を書いて固定読者(同級生)を持った。学校に来るのが楽しくなったという友達もいた。それが原点。だから、「友人がいなくても人の心に触れたいと思っている人が、僕の本を開いてくれたら」と思っている。

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