戦闘機、設計者ならではの描写 『推定脅威』で松本清張賞・未須本有生さん

2014年08月05日

未須本有生

 葉室麟や山本兼一らが輩出してきた松本清張賞。今年は、大手航空機メーカーで戦闘機の設計をしていたという未須本有生(みすもとゆうき)(50)の『推定脅威』(文芸春秋)が選ばれた。「デビュー即日本一の航空小説の書き手」(石田衣良選考委員)と太鼓判を押される新人作家の誕生だ。
 受賞作は、スクランブル飛行中に相次いで起きた自衛隊機の墜落事故の謎に、女性エンジニアが立ち向かうミステリー。戦闘機を知り尽くした設計者ならではの描写が光る。
 長崎市出身。物心ついたときから、飛行機が好きだった。「エンジンの付き方、羽の生え方。レイアウトにひかれました」。東京大学工学部で航空工学を学び、卒業後は念願の航空機メーカーに。10年かけて、紙の上にあった機体が空に飛び立つまでを見届けた。
 その後フリーの工業デザイナーに転身。7年前、大病を患ったことが転機になった。ほとんど読書経験はなかったが、リハビリがてらに通った図書館で読書の面白さに開眼。「飛行機の世界で面白い物語を書けないか」。残りの人生を賭けてみようと思った。
 学生時代は作文も苦手。「小説は才能がある人が書くもの」という先入観もあり、なかなか筆が進まなかった。だが、2年かけて書き上げた初めての小説で新人賞に。「文章でほめられたのは初めて」とはにかむ。
 次作の予定を尋ねると、「これは5部作のうちの三つ目なんです」。残り4作のアイデアをとうとうと語り始めた。「自分がかつて身を置いた世界への回顧でもあるし、こういう戦闘機はどうですか、という提案もちょっと込めています」。経験に裏打ちされた創作の泉は、尽きない。

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