「吾輩ハ猫ニナル」で芥川賞候補に 横山悠太さん

2014年08月19日

横山悠太

 (よこやま・ゆうた 32歳)
 小説「吾輩ハ猫ニナル」で群像新人文学賞を受賞してデビューしたばかり。芥川賞候補にもなり、受賞は逃したものの、さっそく単行本が刊行(講談社)された。
 1981年生まれ。岡山県出身。23歳の時に、日本語教師として中国へ渡った。現在は北京の大学で中国語を学ぶ留学生だ。
 日本語を勉強する中国人は、漢字の違いやカタカナに苦戦するらしい。「中国語に日本語のルビを付けた小説を書いてみたら面白いかも」と思いついた。
 「吾輩ハ猫ニナル」の主人公は、幼少期を父の国日本で、就学してからは母の国中国で育った〈混血(ダブル)〉の大学生駿(かける)。ビザの都合で日本に行く必要に迫られ、単独で東京へ。友人に買い物を頼まれ秋葉原へ行くと、〈遊戯(ゲーム)店〉の前に長い行列。〈双馬尾(ツインテール)の浅葱色(あさぎいろ)の假髪(かつら)を戴き、無袖衣(ノースリーブ)に迷ニ裙(ミニスカート)の形(なり)で揚声器(スピーカー)を片手に〉した客引きの女性を横目に町を歩く。一休みしようと入った〈女僕珈琲店(メイドカフェ)〉。そこで駿を待っていたのは……。
 〈〉内は本文からの引用だ。二つの国と言語を行き来する主人公の「ぐらぐらする感じ」が、ユーモラスに表現される。漢字とひらがなとカタカナという3種類の文字を持ち、外来語を自在に、あるいは〈乱七八糟(いいかげん)〉に取り入れてきた日本語の特殊性も浮かび上がる。
 小中学生の時は国語、特に作文が苦手でコンプレックスがあったという。学生時代、それを跳ね返すように宗教、歴史、心理学、言語学などの本を読みあさった。大学は工学部に入るが、「物理や数学は得意だけど好きじゃない」と気がつき、中退。フリーターをへて日本語教師の資格を取った。
 「新人賞の候補になって、自分が面白いと思うことを他人も面白がってくれるとわかった。うれしかった。笑える時って、一瞬論理を超える。思ってもみなかったことやちょっとしたズレ。そんな感覚が好きなんです」(編集委員・吉村千彰)

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