放射能・電気に向き合った初めての長編小説 小林エリカさん

2014年08月26日

作家の小林エリカさん

こばやしえりか (36歳)

 初めての長編小説『マダム・キュリーと朝食を』(集英社)が、今年の三島賞と芥川賞の候補作になった。放射能や電気、人間を含めた生物の歴史に挑戦した意欲作だ。

 「北の町に大きな地震と津波がやってきた」10年後、震災の年に生まれた猫は放射能を「光」として見、もう一人の主人公である少女の祖母は「声」として聞く。2011年の大震災と原発事故を想起させるが、仕掛けは複雑。ラジウムを発見したキュリー夫人やエジソン、電気実験で殺された動物など、実際のエネルギー史を交えて時空間を行き来する。

 震災前から独学で放射能を調べていた。「放射能や電気は今後も社会で考え続けていく問題。以前は小説=私小説と思い込んでいたが、真摯(しんし)にテーマに向き合うのが文学だと気づき、この作品を書けた。読者が未来を考えるきっかけになってほしい」

 1990年代末に短編アニメ「爆弾娘の憂鬱(ゆううつ) 恋の放射能」でデビュー。マンガや映像、ノンフィクションなど幅広く活動し、今回の小説も先行するマンガ『光の子ども』と対をなす作品だ。最近は歌手と共にアルバムもリリースした。

 父はホームズ研究家の故小林司。母も翻訳家で、幼い頃から家には本があった。偶然手にとった『アンネの日記』を読み、不条理への憤りを書き残したアンネ・フランクを追いかけるように、作家やジャーナリストに憧れた。

 「物語よりすごい現実がある。歴史や時間を写し取ることは難しいが、それでも書いていきたい」

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