均衡の崩壊、描いた長編ミステリー 石持浅海さん

2014年09月09日

石持浅海さん

 精緻(せいち)でユニークな謎解きを生み出し続けるミステリー作家、石持浅海(47)が、小説『御子を抱く』(河出書房新社)を刊行した。ありふれた住宅地を舞台に、奇妙な信仰集団内で起こる連続殺人を描いた。自身の最長編となる自信作だ。

 物語の主人公は、実直な人柄で、生まれながらに周囲をひきつけてしまう中小企業のサラリーマン星川。埼玉県にある新興住宅地には、星川の言葉に感化され、彼を師とあがめる「門下生」たちが集まって住んでいる。だが、星川の死後、事故で人工冬眠している「御子」をめぐって、門下生たちの主導権争いがはじまる。

 異様な状況設定にしたのは、「三つどもえの派閥の均衡状態が崩れていくさまを書いてみたかったから」。登場人物それぞれの立場から語られる物語が、大団円である「謎解き」に向かって収斂(しゅうれん)していく。

 石持は愛媛県で生まれ育ち、九州大で生物学を学んだ。卒業後は食品会社に入社。今もお菓子の研究開発にいそしみながら4人の子どもを育てる兼業作家だ。

 ミステリーとの出会いは、小学校高学年の頃。兄の本棚にあった横溝正史シリーズだった。社会人になってからも鮎川哲也編集の公募短編アンソロジー『本格推理』への投稿を続け、デビューへとつながった。

 平日は午後9時から10時に帰宅。執筆時間は寝る前の数時間だ。「でも会社を辞めようとは思わない。仕事で得られる経験や情報が、小説に役立つこともありますから」

 年3冊のペースで作品を生み出してきた。既刊作品は30作品以上。創作意欲が折れることはないという。「いいものに触れたら自分でも創ってみたくなってしまう。表現者の側になると、創らずにはいられないんです」

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