素っ頓狂で優雅な人たちへの愛「ソマリアの海賊」望月諒子さん

2014年09月30日

望月諒子さん

 豪速球のようなエンターテインメント小説だ。アフリカのソマリアを舞台にした大作『ソマリアの海賊』(幻冬舎)を刊行した望月諒子(55)は、「書きたいものを書けた喜びがある」と語る。

 主人公は、自動車会社に勤める26歳のエンジニア。消えた社用車を探しているうちに密輸船に迷い込み、ソマリアの港町に漂着してしまうが、保護してくれた漁師と交流しながら現地の生活に溶け込んでいく。

 銃撃戦に巻き込まれたり核ミサイルが飛び出したりと、大胆に展開するエンタメだ。一方で、日本人の若者目線で「ソマリアが無政府国家になったのはなぜか」と歴史にいざなう奥深さもある。

 19世紀末から20世紀にかけてイギリスやイタリアの植民地になったソマリア。独立後も内戦状態が続くこの国に、足を運んだことはない。

 だが資料を渉猟するうちに、「悲しい歴史はあったけど、被害者意識はない。どこか素っ頓狂で優雅で自尊心があるソマリア人たちに愛着がわいた」。

 愛媛県生まれ。高校卒業後、家業の学習塾を手伝いながら作家を志した。新人賞に応募するも落選続き。出版社に作品を持ち込み、2001年に電子書籍でデビュー。4年前には、ゴッホの名画をめぐる詐欺事件を描いた『大絵画展』で日本ミステリー文学大賞新人賞を射止めた。

 物語は軽々と国境を越え、登場人物や事件は複雑に絡み合う。

 「身の回りの世界を描いた方が読者の共感を得られるのかもしれない。でもそういうものは書きたくない」。こびずに、自分にしか書けない物語を紡ぎ続ける。

関連記事

ページトップへ戻る