愛国って何? 森達也監督、若者との対話を本に

2014年10月07日

森達也さん

 オウム真理教に密着したドキュメンタリー「A」など、社会の同調圧力に挑むような作風で知られる映画監督の森達也(58)。ネット上でも盛んに議論されている中国、韓国との関係や愛国心について、若者たちと対話した新著を出した。
 保守的な立場の若者を含む6人との、十数時間の議論を再構成した『アは「愛国」のア』(潮出版社)。憲法9条の意義を語る森に、「はっきり言って、お花畑の発想」と手厳しい批判が飛ぶなど、スリリングなやり取りが続く。
 「右派メディアも左派メディアも、客が聞きたい情報を流すことで、自分の市場にこびている。その垣根を越える議論を目指した」と振り返る。
 歴史認識をめぐって、若者の一人は「戦後60年以上もの間、日本は謝り続けてきた。いつまで続けるんですか」と問う。
 森は明治大で受け持つゼミでのエピソードを紹介して応じる。1895年、ソウルの王宮に押し入った日本人らによって朝鮮王朝の閔妃(びんひ)(明成皇后)が殺害された事件について、日本人のゼミ生が誰も知らず、韓国からの留学生がショックを受けたという。「謝る謝らない以前に、『なぜ覚えていてくれないのか』という気持ちはわかる」と話す。
 話題は東アジアで盛り上がるナショナリズムにも及ぶ。若者は「韓国政府も中国政府も、自分たちに矛先が向かないように、日本バッシングを助長して、利用している」と指摘。なぜ中国人や韓国人より先に、日本人に自制しろと言うのか?と疑問を投げかける。
 森は若者に「なぜなら僕は、この国で生まれたから」と応えた。
 領土問題についての発言をめぐり、ネット上に「売国奴」と書き込まれたこともある。「日本人だから、国のことも批判する。だってこの日本を愛しているから」と話す。(上原佳久)

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