童心あふれるファンタジー 恒川光太郎「スタープレイヤー」

2014年10月14日

恒川光太郎 さん

 願いがかなうと言えば「三つ」が相場だが、この作品では「十の願い」がかなう。今年、日本推理作家協会賞を受賞した恒川光太郎(41)の受賞第1作『スタープレイヤー』(角川書店)。「子どもの頃から書きたかった」という童心あふれるファンタジーだ。

 主人公の斉藤夕月(ゆづき)は、離婚歴ありの34歳。失職中でさえない毎日を送っていたある日、見知らぬ男にくじを引かされ、異世界にとばされてしまう。与えられたのは、願い事を入力すると10個まで願いがかなうというタブレット端末「スターボード」だ。

 一生分の食糧や豪邸、魅力的な容姿、そして通り魔への復讐(ふくしゅう)……。一通りの願いを実現させた頃、夕月は、荒野だと思っていた異世界に、自分以外にも「スターボード」を持った全能者がいることに気づく。

 さらに、土着民たちの部族闘争に巻き込まれ、次第に平和のために「願い」の切り札を使うようになっていく。『ナルニア国物語』や『指輪物語』を思わせる壮大な創世記だ。

 「何でも願いがかなうと言われたら人間は何をするのか。願いにまつわる物語を書いてみたかった」。デビュー以来、幻想的なホラー小説で高い評価を得てきたが、満を持して異世界ファンタジーに振り切った。

 東京都出身。十数年前、海の美しさに魅せられ、沖縄に移住した。塾講師の傍ら書き上げたデビュー作『夜市』が日本ホラー小説大賞を受け、直木賞候補にもなった。

 作家生活10年目となる今年は、『金色機械』(文芸春秋)で日本推理作家協会賞を受賞し、飛躍の年にもなった。ただし、本人は至って冷静だ。

 「プレッシャーは感じたことがないし、深いことは考えていない。読んでくれた人に面白かったって言われるために物語を書き続けたい」

 『スタープレイヤー』は、別の登場人物たちの視点でシリーズが続いていく予定だ。

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