戦国生きた謀略家の苦悩照らす『宇喜多の捨て嫁』 木下昌輝さん

2014年11月05日

木下昌輝さん

■宇喜多直家を描き作家デビュー きのしたまさき(40歳)

 娘を嫁がせ、油断させておいて寝首をかく。家族さえ捨て石にした謀略家と伝わる戦国時代の武将、宇喜多直家を描いた「宇喜多の捨て嫁」(文芸春秋)で作家デビューした。
 巻頭に収録した表題作の短編は、男たちの策略のはざまに生きた直家の四女の物語。直木賞作家の佐々木譲さんや桜木紫乃さんを世に出した「オール読物新人賞」の一昨年の受賞作だが、他の連作短編を読み進めると、表題作は、直家自身の壮絶な生き様を浮き彫りにするこの本のあくまで序章のようなものにすぎないとわかる。
 なぜ直家は、悪人とののしられながらも非情な計略を重ねる人生を選んだのか。謀略家という横顔の陰の苦悩が明かされるにつれ、物語はすごみを増していく。「悪人や小人物とみなされる存在にも、新たな光をあてる作品を書きたい」
 大阪市都島区在住。大学で建築を学んで設計の仕事に就いたが5年ほどで退職し、ライターをしながら小説を書き始めた。「読む人のほうをちゃんと向いて、読みやすいように書く。ライターをしながら、そういう訓練は積んできたつもり」
 田辺聖子さんらが学んだ大阪文学学校にも通った。今年は修了生の朝井まかてさんが直木賞に輝いたばかり。魅力的な書き手が、また1人現れた。
 本体1700円。(柏崎歓)

関連記事

ページトップへ戻る