ムーミン生んだ仕事と愛 トーベ・ヤンソン評伝刊行

2015年01月06日

トーベ・ヤンソンの評伝を翻訳した森下圭子さん

 生誕100年を迎えたムーミンの作者の評伝『トーベ・ヤンソン―仕事、愛、ムーミン―』(ボエル・ウェスティン著、講談社)が刊行された。孤独と自由を尊び、仕事と愛に生きた86年の生涯に、親交のあった研究者が迫った。訳者の一人でフィンランド在住20年になる森下圭子さんは「自分に正直であることを貫いたトーベの人生に触れ、私自身、生きることが楽になった」と振り返る。
 ヘルシンキで生まれたトーベは、10代半ばから挿絵や表紙絵などで収入を得ながら、20代はフランスやイタリアで美術を学び、画家としての地位を築いていった。
 第2次世界大戦中は、ヒトラーなどを題材に大胆な風刺画をたびたび雑誌に掲載。ムーミンの小説を執筆したきっかけも、「悲しく、爆弾に怯(おび)えていた時の、暗鬱(あんうつ)とした気持ちから抜け出したかった」からで、戦争の影響を色濃く受けていた。
 「最期まで表現することをやめなかった人。『戦争で色彩を失った』と嘆いたが、ムーミンの物語や風刺画などを通し、戦時下でも百%の力で表現し続けた」と森下さんは言う。
 1954年、英国の新聞で週6日、ムーミンの連載漫画を開始。人気の過熱に伴い、疲弊していった姿もつぶさに描かれている。
 結婚を考えた男性もいたが、後半生を共にしたのはグラフィックデザイナーの女性トゥーリッキ・ピエティラだった。毎夏、過酷な自然と向き合う島での二人暮らしを大事にした。
 「フィンランドに渡ったのは、確かなものなど何もない、というムーミンの物語の世界観に惹(ひ)かれたから」という森下さん。「好奇心に素直に従い、自分に誠実であれというトーベの生き方は、ムーミンの小説にも息づいている。アニメとはひと味違う原作の世界にもぜひ触れてほしい」(佐々波幸子)

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