「予知や予言、文学の使命」 『太陽・惑星』の上田岳弘さん

2015年01月06日

「作品は問題提起」と話す上田岳弘さん

 「人間は自分の意思と関係なく生まれ、境遇も選べない」。どうにもならないものの象徴を2編の小説それぞれのタイトルにした、上田岳弘著『太陽・惑星』(新潮社)が刊行された。

 「太陽」は新潮新人賞受賞のデビュー作で、三島賞候補に。2作目「惑星」は15日発表の芥川賞候補だ。

 「太陽」は、国連調査団に成り金、通り魔によるドタバタと未来の世界が交差し、太陽の核融合を利用した錬金術の破局へと突き進む。「惑星」は、一方的に送られるメールという形で話が進む。米国資本による科学技術の利用に日本の政治家が協力、地球は生物の脳がつながれた海と化す。

 人類が求めるのは進化か退行か。2作とも現実を超越したビジョンをみせる。

 「究極とはどういうことか、突き詰めて考えるのが癖になっている。人間のありようも、より良い形があるのではないか」と話す。

 兵庫県明石市出身の35歳。阪神大震災時は高校生だった。「淡路島の祖母の家は半壊。終わらないはずの日常が中断し、崩れた。やりたいことをやろう、ぎりぎりを目指そうという性格がそこで強化された」。現在はITベンチャー企業の広報担当役員でもある。

 「惑星」で描いた脳の連結と似たことを、1920年代に英国の物理学者も考えていたことを後で知った。「突き詰めると昔の偉人に近づくのが面白い。吸収し還流したい。でも転用でなく、毎回自分で編み出すことが大事。技術の進歩や認識の変化など、別の角度から光を当てることで“近いが違う”表現になる」

 文学そのものについても突き詰める。「予知や予言が文学の果たすべき役割。純文学は、新しい物を提示する使命もあると思う。できなければ消化試合。いや、負けた気がする」
 (編集委員・吉村千彰)

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