「長篠合戦」に新たな合戦像 平山優さん

2015年01月26日

平山優さん

 平山優さん◇山梨県立中央高校教諭(51歳)

 武田勝頼と織田信長・徳川家康の連合軍が激突した有名な合戦にもかかわらず、内容について諸説が分かれる1575年の長篠の戦い。先頃出版された『検証 長篠合戦』と『長篠合戦と武田勝頼』(いずれも吉川弘文館)で旧説を軒並みひっくり返し、新しい合戦像を浮上させた。「最近になって新史料が増えたわけではないので、わからないことが多く、書いていてつらかった」と振り返る。

 2冊の著書では「(身分の高い)騎馬武者だけを集めての突撃はなかった」「(撃ち手の能力や地形の関係で)鉄砲の三段撃ちは行われなかった」などの90年代以降の新説に異議を唱え、史料を元に「騎馬武者だけを集めた隊は存在し、突撃も行われた」「三千余丁の鉄砲は3隊に分けられ、3カ所で射撃が行われた」との見方を示した。

 「騎馬武者には農民出身者もいた。当時、馬に乗ることは身分の象徴ではなく、財力を反映していた可能性が高い」

 『川中島の戦い』(学研M文庫)をはじめ著書は十数冊にのぼり、教鞭(きょうべん)をとる高校の図書室には専用コーナーが設けられるほど。史料の少ないなか、関係する複数の集団の動きを多方面から検討することで歴史を叙述する手腕が高く評価されている。ここ10年で急速にレベルをあげてきた戦国時代史研究のトップランナーの一人だ。

 東京都出身。両親が山梨生まれだったこともあって甲州の歴史に興味を持ち、学部と大学院で中世史(戦国時代史)を専攻。県に就職したものの、最初の3年は県埋蔵文化財センター、次の15年は県史編さん室の近世史(江戸時代)の担当とやや専門外の部署に配属された。

 「でも、それがよかった。中世の村の形は近世まで受け継がれることが多いし、考古学の方法論を学ぶこともできました」。4年前からは教壇に立ち、生徒に歴史の面白さを説く。

 いま研究しているのは来年の大河ドラマにも登場する戦国武将・真田信繁(幸村)と兄の信之だ。「歴史研究はそれまで知られていなかった事実に最初に自分が迫ることができる。この楽しさは何ものにも代え難い」
 (編集委員・宮代栄一)
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 1964年生まれ。立教大学大学院博士課程前期修了。著書に『戦国大名領国の基礎構造』(校倉書房)ほか。

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