点数以外で勝負したくて 絵本作家・谷口智則さん

2016年12月22日

絵本作家の谷口智則さん

絵本作家の谷口智則さん

谷口智則「100にんのサンタクロース」(文渓堂)

■絵本作家・谷口智則さん
 人との出会いや日常の延長から、アイデアや発想のヒントが生まれることが多いですね。
 商業デザインを手がけることもあり、ワッフル店のパッケージをつくる仕事に出かけたときは、ワッフルメーカーのでこぼこがワニの背中に見えて。ワニの夫婦が背中を合わせてワッフルをつくる物語がその場ででき、今年、「ワニのワッフルケーキやさん ワニッフル」(アリス館)になりました。
 180センチほどの長身にコンプレックスを持っていた知人の女の子の話がヒントになったこともあります。大きいからいいこともあるし、小さくても同じ。できないことがある者同士が出会ったら……。そうひらめいて「おおきいサンタとちいさいサンタ」(文渓堂)ができました。
 商業施設の依頼でクリスマス装飾の企画をしているうちに、さらにその物語が発展したんです。2人のほかに、もっといろんなサンタがいていいし、それぞれ果たせる役割がある。それが「100にんのサンタクロース」(同)です。寝坊してクリスマスに間に合わないサンタもいるんです。
 ぼく自身、高校の勉強ではかなわないやつがいっぱいいました。3年で進路を考えたとき、点数だけで評価されないことを考えたんです。負けず嫌いなんですね。
 それが小さなころから好きだった絵でした。小学2年生のころ、漫画「ドラゴンボール」を毎日1ページずつ描き写すようになりました。教室で見てもらうと友だちは「うまい」と言ってくれる。認めてもらえる喜びを知り、5年間描き続けました。
 やりたいことを見つけるのが遅く、2年浪人しましたが、いろんなものを見て考える時間がありました。その一つが海外の絵本の原画展。絵の美しさと物語の深さにみせられました。
 もともと冒険ものなんかの童話は、小学校のクラスで一番読んでいました。1枚の絵だけで人を魅了するのは難しいけど、絵と物語を合わせた絵本をつくりたいと思うようになりました。
 やるなら海外でも読んでもらおう。日本人にしか描けないものを身につけるため、大学で日本画を学びました。
 大きな影響を受けたのは、美大生時代に模写した国宝の日本画「鳥獣戯画」。ウサギやカエルがユーモラスに描かれ、マンガの元祖と言われますが、絵本の元祖とも言えます。
 長い時間向き合い、筆遣いや背景のくすませ具合を考えるのが面白いんです。古い絵のかすれ具合や古びて落ち着いた色合い、二足歩行に擬人化した動物たち……。いずれも今の私の作品に表れています。
 ぼくは6色を混ぜて色をつくります。個性的と言われる色彩感覚を育んでくれたのは、地元の大阪府四條畷市の自宅から間近に見える山です。日本ならではの四季があり、毎日色が変わっていきますよね。
 ぼくの絵本は当初、日本で売れず、注目してくれたのはフランスなど海外の出版社でした。数年前まで国内で入手が難しかったので、四條畷に2012年、ギャラリー・カフェを開き、絵本を取り寄せました。
 同級生が大手企業に就職して活躍していたころ、ぼくはブックカフェで6年ほどアルバイト。長く感じましたが、その経験が生きています。気が向けばぼくも店に入り、ラテアートで絵本のキャラクターを描きます。
 創作していると行き詰まることや不安なこともあります。読者の方に生の声を聞かせてもらうと、創作の方向性を確かめられる。それが支えになっています。
 何でも自分でやってみたくなるんです。ライブペインティングなどイベントや講演も大切にしています。呼ばれたからこそ行ける知らない土地の特色を見るようにしています。(聞き手・田中章博)
     ◇
 1978年生まれ。10月に、セリフのないデビュー作「サルくんとお月さま」(文渓堂)が、12年ぶりに復刻。ライブペインティングを、12月23日午後2時、大阪・近鉄百貨店あべのハルカス本店▽24日午後2時、奈良・近鉄百貨店奈良店▽1月15日午後2時、京都・京都高島屋で開催。同2~17日は京都高島屋で個展も。

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