コンシェルジュ間室道子さんに聞く棚づくり
昨年12月、東京・代官山の住宅街に3棟からなる「代官山蔦屋書店」がひっそりとオープンした。50代以上をターゲットにした「大人のTSUTAYA」にはクチコミで客が集まり、作家やミュージシャンなども利用する。人文・文学コーナーのコンシェルジュ、間室道子(まむろ・みちこ)さんに、そのコンセプトを聞いた。
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コンシェルジュの間室道子さん。通称「間室コーナー」で。
「プレミアエージ」から若者まで
代官山蔦屋書店は本、文具、旅行、映画、音楽などのコーナーに、計30人のコンシェルジュを置いている。コーナーごとの目利き(コンシェルジュ)が売り場の商品構成を決める棚作りが特徴だ。
間室さんは青山ブックセンター(ABC)六本木店の名物書店員として知られ、在職中から二足のわらじで書評や小説のオビなどを書いてきた。2011年夏に25年勤めたABCを辞めたときには、週刊誌などで話題にもなった。
退職後、書評家として独立し、作家や編集者から書評用に送られてくる本を読むたびに、「どうやってこれを売っていこうか」とつい考えてしまう自分に気づき、「いつか本屋に戻らなければ」とは思っていた。そこにちょうど出合ったのが、代官山蔦屋書店のコンシェルジュの公募。「本の神様っているんだな」と実感したという。
代官山蔦屋書店にはコミックは置いてない。どのコーナーも50歳以上の「プレミアエージ」を意識した品ぞろえだが、それが結果的に幅広い年齢層に受け入れられたという。
「団塊ビジネスがいまだに成功していないのは、それを年齢でしかとらえなかったから。わたしたちは彼らのライフスタイルからとらえようと議論を重ねました。60代の人たちは、若いころにビートルズやヒッピー文化に触れ、反骨精神にあふれ、精神的に柔軟な人たち。今まで若者がしてきたような海外旅行も今はプレミアエージのほうが活発で、一番元気な世代かもしれません。そのためにしんみりした棚にはまったくならず、ここが一番元気な棚だよねという品ぞろえができました」。
ターゲットより若い30~40代のビジネスマンの姿も目立つという。「誰でも来られる、どなたがいらしても満足できるという大風呂敷を広げた商売は、結局どなたにもアピールしないと思います」と言う。
コンシェルジュの数だけ棚がある
棚づくりはそれぞれのコンシェルジュに任されている。人文・文学コーナーは古書含めて4万5000冊の限られたスペースで、あえて捨てたジャンルは「ラノベ」。「ただ、ラノベ出身といっては失礼かもしれませんが、舞城王太郎さん、米澤穂信さん、辻村深月さんとかラノベから一皮むけた人の本は、積極的に応援したいので置いています」(間室さん)。
別のコーナーのコンシェルジュが、間室さんと同じ本を自分のコーナーに選ぶこともある。電子書籍になくてリアル書店にあるのは、「本を並べる」行為だ。この本の隣になぜあの本を並べるのか、そこに「物語を持たせる」ことこそがコンシェルジュの仕事であると、間室さんは言い切る。「本はコミュニケーションツールでもあるんです。コンシェルジュの数だけ棚がある。ベストセラーでなくても、『こんなにおもしろい本もあるんです』と伝えたい」。
コンシェルジュに会いに来て
「お客さまにはコンシェルジュのファンになってほしい、この書店に何度でも通ってほしい」というのが間室さんの願いだ。レジ横の通称「間室コーナー」には、間室さんのお薦め本が並び、自身でPOPも書く。
この狙いは「このコンシェルジュは今月この雑誌に載ってこういう発言をし、こういう書評を書き、そこでおすすめした本はこれです」と「コンシェルジュ間室」をアピールすることだ。
「最近の書店は、中高年が安心して働ける場ではなくなっています。中高年の給料で若い人が3人雇える。でも若い書店員は『検索機がなければ本は探せません』と言う。本屋に来るお客さまの7割は、買う本を決めずに来る人、何が読みたいのかわからない人、ビジネスマンだとなにかのアイデアを探しにくる人です。ベテランの書店員なら書名がわからなくても『青い表紙でこんな文字で』とか、『登場人物にこんな人がでてくるもの』と言われただけで、『ああ、あれね』と探し出せます。どんどんコンシェルジュに会いに来ていただいて、一緒に本を探しましょう」。
間室さんは、開店の7時から昼下がりまで店に出る。4時に起床し、本を「読み、書き、売る」毎日だ。
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