『孤独のグルメ』 原作者・久住昌之が語る谷口ジロー原画の魅力とドラマ化秘話

[掲載]2012年06月20日

『孤独のグルメ』原画 「鳥取県鳥取市市役所のスラーメン」から 「週刊SPA!」2012年5月15日号 (C)久住昌之・谷口ジロー 写真提供=米沢嘉博記念図書館 拡大画像を見る
『孤独のグルメ』原画 「鳥取県鳥取市市役所のスラーメン」から 「週刊SPA!」2012年5月15日号 (C)久住昌之・谷口ジロー 写真提供=米沢嘉博記念図書館

「孤独のグルメ 谷口ジロー原画展」 拡大画像を見る
「孤独のグルメ 谷口ジロー原画展」

松重豊主演のドラマ。DVDボックスのプロモーション映像 拡大画像を見る
松重豊主演のドラマ。DVDボックスのプロモーション映像

表紙画像 著者:久住 昌之、谷口 ジロー  出版社:扶桑社 価格:¥ 1,234

 中年男が食欲のままにひたすら一人メシを楽しむ『孤独のグルメ』が、今アツい。1月に関東地方を中心にテレビドラマが放映され、5月にDVDボックスオリジナルサウンドトラックが発売された。
 「孤独のグルメ 谷口ジロー原画展」も、9月30日まで東京・お茶の水の明治大学米沢嘉博記念図書館で無料公開中。原画の展示は珍しく必見だ。6月17日のトークショーではマンガの原作者でテレビドラマの音楽も担当した久住昌之が、谷口ジローの魅力やドラマ制作の裏話を語った。
『孤独のグルメ』原画の写真特集はこちらから

■谷口ジローが描くことで生まれる店
 『孤独のグルメ』は、輸入雑貨商を営みちょっぴりダンディな井之頭五郎が、仕事の合間に実在する店でなにげない定食などをひたすら食べるマンガ。1994年に男性誌でマンガ連載が始まり、単行本は42刷を重ねる。1話1店の読み切りで主に8ページで構成し、現在は「週刊SPA!」に不定期で掲載されている。
 五郎は食への姿勢を「モノを食べるときはね、誰にも邪魔されず、自由で、なんというか、救われてなきゃあ、ダメなんだ」と独りごち、焼き肉ランチに興奮しては「うおォン 俺はまるで人間火力発電所だ」「うまい!うまい!うまい!」などと心の中でうなる。美食へのうんちくではなく、「酒が飲めない中年男が一人で食べる心情描写」に徹した点が、いわゆる「グルメマンガ」とは異なる。久住は「時代とともに『一人メシ』が受け入れられるようになってきたのかもしれない」と、最近の「孤独」人気を見る。
 「谷口ジロー原画展」でB4の原画を見ると、線や陰影が書き込まれていることがよくわかる。スクリーントーンが細かく重ねられ、「原画はとても重い」。一方で「細かいけどごちゃごちゃにならない、もたれない絵」と久住は評する。
 言葉の少ないマンガだけに主人公の気持ちを伝えるには、読者がその店にいたかのように感じさせる必要があるため、谷口は細かく描き込んでいるのだろうと久住は推測する。マンガで紹介する店や食事は久住があてどなく町歩きをして見つけ、そのスナップ写真とストーリーを谷口に渡す。ただし、単なる写真のトレースではない。「谷口さんが作り出した店の雰囲気をモノクロの陰影だけで表現することが、谷口さんならではの技術」と、久住は力説する。


ドラマのテーマ曲を演奏する久住昌之(右)(写真をクリックすると拡大します)

■アフレコはバスの中で
 ドラマ化にあたって久住たっての条件は、「マンガで扱った店は使わないでほしい」。テレビで店を生々しく撮ると、谷口が描いたことによって生まれた絵の世界が崩れるという理由だ。そのため、ドラマのストーリーはほぼオリジナル。ただし五郎のセリフ回しだけは久住が細かくチェックした。
 ドラマ第8話の「神奈川県川崎市八丁畷の一人焼肉」の回では、台本の「よし決めた。ここはやっぱり焼き肉を食おう」を「ここはやっぱり焼き肉だろう」に直した。こうしてどんどん、テレビの五郎がマンガの五郎に近づいていった。
 ドラマで生まれた「名言」もある。何を食べるか迷って自問する「おれの腹は何腹なんだ?」は、五郎を好演した松重豊に合わせて自然と生まれたものだという。
 久住もテレビのスタッフも「ドラマがマンガと全然違うじゃないか」と言われることが心配だったが、放映初日のオンエア中にスタッフがツイッター、2ちゃんねる、フェースブックをチェックし、松重が食べた瞬間に書き込まれた「ウマソー、ウマソー、ウマソー」のコメントを確認して、ほっとしたという。
 ドラマ制作の低予算ぶりは、会場の笑いを誘った。ロケで黙って食事をする松重の演技に、アフレコを付けるスタジオが取れず、松重はロケ帰りのロケバスの中で、映像も見ないでセリフ録りをした。またロケは店の定休日と翌日の営業前に行ったため、松重は朝の6時から焼き肉をモリモリかき込むはめに。「この仕事でやせました」と後に告白したそうで、かなり過酷なロケだったようだ。
 ドラマ使用曲も手配が遅れ、「それなら僕がつくろうか?」とバンド活動もしている久住が提案した。テーマ曲こそスタジオで収録したが、劇中で使用した約50曲は、バンドのメンバーが自宅で演奏した音源のデータをメールで送りあって、久住がまとめたものを元にして作った。
 「自分の作品に自分で音楽を付けられたのは幸せ」という久住は、トークショーでテーマ曲をサックス奏者と演奏し、会場は大いに盛り上がった。トークイベントは今後も予定されており、7月には「編集者が語る谷口ジローと孤独のグルメ」、9月には「谷口ジローの味わい方」として、谷口ジローと夏目房之介の対談がある。
         ◇
■「孤独のグルメ 谷口ジロー原画展」やトークショーの詳細はこちらから

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孤独のグルメ 【新装版】

著者:久住 昌之、谷口 ジロー/ 出版社:扶桑社/ 価格:¥1,234/ 発売時期: 2008年04月


孤独のグルメ (扶桑社文庫)

著者:久住 昌之、谷口 ジロー/ 出版社:扶桑社/ 価格:¥648/ 発売時期: 2000年02月


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