空想の本屋「いか文庫」 東京の書店で不思議なフェア

2012年08月25日

「いか文庫」が「リアル」な書店でフェアを開催中だ。店主(左端)やバイトくん(右端)、バイトちゃんが店頭に立つことも=武蔵野市吉祥寺本町1丁目の「BOOKSルーエ」

 店も本もないけれど、どこかで営業している。そんな空想の本屋がある。その名も「いか文庫」。本好きの3人が、本屋のグッズをつくり、本に関するイベントを開く。吉祥寺(武蔵野市)の書店「BOOKSルーエ」の店先で、その謎の姿の一端が見られる。
 そもそも、なぜ「イカ」なのか。
 「私のケータイケースが足のついたイカの形だったんで」と笑うのは、「店主」こと書店員の粕川ゆきさん(34)。「ヤキソバ文庫」と迷ったとか。書店名には深い意味はないらしい。
 見えないのに、存在するから「エア書店」と称する。「バイトくん」こと編集者の中嶋大介さん(36)は「金はないが、本や本屋が好き。だから妄想の本屋を開こうと。実際の書店らしいことはやってません」。
 目的は? 「いか文庫をワールドワイドにしたいんです」。最年少で、「バイトちゃん」こと会社員の藤田真緒さん(25)の目は真剣だ。
 「本屋をやるなら、どういう名前にするかな」
 今年3月、店主の粕川さんと友人のたわいもない会話が始まりだった。さっそく、知り合いのイラストレーターにイカをあしらったロゴをつくってもらった。
 飲み友達だった中嶋さんも加わり、新潟出身で、大のイカ好きの藤田さんを、ツイッターを通じて勧誘した。本の好みは3人それぞれだが、本が大好きなのは一緒。仕事帰りに集まり、やりたいことを話し合う。
 フリーペーパー「いか文庫新聞」を定期的に発行。「いか文庫、全米デビューへ」などの見出しが躍る。本の紹介や書店に関するコラムがある。ツイッターやフェイスブックで日々の活動をこまめにつぶやく。
 文庫のロゴを入れたオリジナルTシャツやトートバッグ、ブックカバーを作製。荻窪や中野で、本を語り合ったり、書店のポップの講習をしたりする「イカナイト」というイベントも開いた。そんな活動が、書店員や編集者、クリエーターらを中心に話題を呼んでいる。
 「BOOKSルーエ」の花本武さんは「自らがおもしろがっているし、そこに既存の書店とは違うおもしろさがある」。フェアを呼びかけると、3人は快諾。8月15日から、いか文庫が選んだ約20冊を並べ、自作のポップを添えた。本やグッズはよく売れているという。
 自分たちで本を出版したいという大きな夢もある。けれど、中嶋さんはこうつぶやく。
 「目的を設定したら、いつかは終わってしまう。イカが泳ぐようにフワフワとやっていければいいと思うんですよ」

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