売れ続ける福島原発「事故調報告書」

2012年11月28日

書店に平積みにされた国会の東京電力福島第一原発事故調査委員会の報告書=東京都港区浜松町2丁目

 脱原発が衆院選の争点になる中、「東京電力福島第一原発事故は人災」と断じた国会の事故調査委員会報告書が、じわりと部数を伸ばしている。先に出版された民間事故調の報告書も約10万部の売れ行きだ。事故から1年8カ月。報告書が静かに売れている理由とは。

■3万5千部 避難者も購入

 東京・JR浜松町駅近くの書店。9月に出版された国会事故調の報告書はいまも原発関連コーナーで平積みになっている。会議録などを収録したCD―ROM付き594ページで税込み1680円。版元の徳間書店によると、初版は5万部刷ったためコストがかさみ、3万部以上売れないと赤字と心配されたが、これまでに約3万5千部が売れた。同社は「堅いテーマでこれだけの部数が出ればまずまずではないか」。
 複数の書店データでみると、最も売れているのは東京で、神奈川と福島が続く。福島県内に7店舗ある岩瀬書店の幕田八千代・中合店店長は「福島市や郡山市に避難している人が買っていく。メディアが原発事故を取り上げる機会も減ったが、地元には忘れてはいけないという思いが強い」と話す。

■HPに公開、出版求める声

 なぜ出版されたのか。
 民間有識者10人から成る国会事故調は7月、衆参両院議長に報告書を提出。首相官邸、東電双方の対応を批判し、事故を「自然災害ではなく人災」と明記した。ホームページ(http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3856371/naiic.go.jp)でも公開されたが、書籍化を求める声が寄せられ、「国民に出来るだけ安く広く販売する」という条件の競争入札で徳間書店に決まった。
 福島第一原発事故をめぐっては、政府、民間、東電の各事故調査委もそれぞれ報告書をまとめた。
 昨年5月に菅直人政権(当時)が設置した政府の事故調査・検証委員会(委員長、畑村洋太郎・東大名誉教授)は、国や東電は安全を最優先にする「安全文化」が欠けていたと指摘した。報告書はホームページ(http://icanps.go.jp/)で読める。
 一方、大学教授や弁護士らによる「福島原発事故独立検証委員会」(民間事故調)は今年2月に報告書を公表、3月に刊行された。過去の政策や既得権益構造も追及するとして立ち上がり、特に国の原子力安全規制が国際的に遅れていたことを「ガラパゴス化」として厳しく批判した。
 民間事故調を作った財団の予算では報告書を2千部しか作れず、公表時の記者会見で配り終えた。そこで、より多くの人に読んでもらおうと、出版社のディスカヴァー・トゥエンティワンに書籍化を依頼。412ページ、1575円で、10万部に届きそうという。委員長を務めた北澤宏一氏は「国民がいかに不安の中に置かれていたのか、政府による公式発表では満足できなかったということの反映ではないか」と見ている。
 また、東電も社内の事故調査委員会で検証し、報告書はホームページ(http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/interim)に掲載しているが、想定外の大津波が事故の原因と主張。自己弁護に終始している。

■真相の追及、願いを反映か

 報告書をどう役立てるか。国会事故調の委員長を務めた元日本学術会議会長の黒川清氏は「福島原発事故は終わっていない。世界から、将来を担う子供たちから、我々一人ひとりが問われている。国民に広く読んでもらいたい」。徳間書店の力石幸一出版局長は、「何が悪かったのか、事故を評価しないと歴史を前に進められない。反原発デモに参加する若者にも読んで欲しい」。
 政府・民間・国会の3事故調の報告書を読んだ一橋大の斉藤誠教授(マクロ経済学)は「紙媒体としてこれだけ多く買われているのは、詳細な部分を読み込んで、事故は本当はどうだったのかを知りたいという意思の表れではないか。事故の重要な教訓は詳細な部分にこそ含まれている。いまも原発事故を冷静に問い直そうとしている人々がいることに希望を感じている。また、要旨を作ったり、専門用語を詳しく説明したりと、どの報告書も市民に伝える意思を感じた」と話す。

国会事故調ホームページ
東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会ホームページ
東京電力・福島原子力事故の社内調査情報ページ

国会事故調 報告書

著者:東京電力福島原子力発電所事故調査委員会
出版社:徳間書店

表紙画像

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