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クラス内の序列に迫る 東大院生の著書、2万6千部発行

[文]根岸拓朗  [掲載]2013年02月20日

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「教室内カースト」の著者、鈴木翔さん=東京大本郷キャンパスの赤門前

表紙画像 著者:鈴木翔、本田由紀  出版社:光文社 価格:¥ 907

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 学校生活を過ごす子どもたちの人間関係に、なぜ「地位」があるのか――。最近は「スクールカースト」とも呼ばれる中高生のクラス内の階層・序列について、東京大大学院博士課程の鈴木翔(しょう)さん(28)が論じた本が話題を呼んでいる。
 昨年12月に出版された「教室内(スクール)カースト」(光文社)。2011年に完成した修士論文をもとにしている。中学生でも読める平易な文章でつづり、すでに約2万6千部が発行された。
 研究を始めたのは09年。いじめや不登校に比べ、ふだんのクラスの人間関係の研究が少ないと感じ、最近使われる「スクールカースト」という言葉に着目した。大学1年の男女10人にインタビューし、中高生時代の様子を尋ね、カーストの実態に迫った。
■有利な生活送る
 クラスは、高い順から「ギャル」→「普通」→「地味」とか、「上」→「下」といったグループに分けられていた。上位の生徒の特徴は「にぎやかで気が強い」「異性の評価が高い」「行事でほかの生徒に『やる気』を求める」といった点が挙げられ、「席替えでわがままを通せる」など学校生活を有利に過ごせていたという。
 「上」の生徒が「下」の生徒に対し、「上履きを投げつけてクラスの笑いを取る」「『見てるだけでウザイ』と言う」など、理不尽だが、いじめとは意識されないエピソードも語られた。「『上』はランクを操作する権利もある」と、「下」の生徒は恐怖心や諦めの感情を持つ。その結果、力関係は固定化し、クラス替えをしても変わらない。「(立場の弱い)この子と仲良くしてるとマズイ」と考えて友達づきあいをやめ、「上」のグループに近づくといったことが「普通にある」という。
 教師4人にもインタビューをした。学生と同様に「自己主張の強い生徒が『上』」「物静か、オタク系は『下』」といった意見が語られた。「生徒の勢力関係の把握を外すと、学級経営が成り立たなくなる」と話したり、地位の差を「生きる力」「コミュニケーション能力」の差として肯定的にとらえたりする人もいた。
 なぜ、序列ができるのか。鈴木さんは「人間関係への過大視が影響しているのではないか」と話す。
 以前に比べて、学校では、(1)成績が良い(2)学級委員長をしている(3)ケンカが強い――などの価値が落ちる一方、「生きる力」「人間力」など、中身のあいまいな力が強調されるようになった。明確な価値基準が見えにくくなったなか、「人間関係をスムーズにつくり、今を楽しく過ごす」ことが重視されすぎて、地位の差につながる――。鈴木さんはそう推測する。
■息苦しさの原因
 本の末尾では、スクールカーストの息苦しさに悩む生徒に対し、「学校の人間関係は期間限定。学校以外の場所に行ってもいい」とアドバイスしている。教師には、学校内で見えるコミュニケーション能力などを評価することが生徒同士の人間関係にも影響を与えるとして、慎重さを求めた。
 中高生のころ、自らも見えない地位の差を感じていたという鈴木さん。今回の本の出版後、高校生から「言葉にしてくれてありがとうございました」と感謝されたり、学校の教師から「うちの学校にもある」と助言を求められたりした。
 今後、学校現場でスクールカーストができあがる過程や、クラス替え後も序列が続く要因、教師側の意識をさらに深く研究するという。鈴木さんは「いじめとは違う、普通の子がうまく言えない悩みや息苦しさをもっと説明できるようにしたい」と話す。
     ◇
■「スクールカースト」の特徴
・小学校では「個人間の差」だが、中学や高校では「グループ間の差」と認識される
・上位グループは異性からの評価が高く、にぎやかで気が強い。学校生活を有利に過ごせる
・上位グループは結束力があり、クラスに影響力がある。下のグループから恐れられる
・差は固定され、努力では変えられない
・教師はスクールカーストを「生きる力」「積極性」などの能力の差とみている。努力ややる気で差が改善できると考えている
※いずれも「教室内カースト」から

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