まいど教授の大西さん、中小企業研究を一冊に

2013年04月04日

著書を持つ大西正曹・関西大名誉教授

 東大阪市の町工場を30年訪ね歩いて研究してきた関西大学(吹田市)の大西正曹(まさとも)名誉教授(70)がこの春、教壇を去った。回った中小企業はのべ3千社以上。「まいど」と声をかけ、社長たちからは、「まいど教授」と呼ばれていた。退職を機に、研究成果をまとめた著書を出版し、4月からも、東大阪を拠点に町工場を盛り上げるために働く。

 大西さんは1982年に関大の助教授になった。産業社会学を専門とし、府職員から「中小企業を研究するなら東大阪でやらないと」と言われ、研究対象に決めた。
 研究を始めた頃、各企業にアンケート調査票を送ったが、返事はこない。回収しようと町工場を回ってみると、「何をしにきたんや。帰れ」と追い返された。「大学の名前を出せばすぐに協力してくれると、たかをくくっていた」
 東大阪商工会議所の当時の職員には、「東大阪でやるなら本気でやらんといかん」と言われた。「一過性ではだめだ。まず親しくならないと」と、会議所と地元自治会、市役所職員らの協力を得て、1社ずつ何度も通った。次第に知り合いの社長が増え、別の会社も紹介してもらえるように。酒を酌み交わしたり、家に呼ばれて食事を振る舞ってもらったり、旅行にいったりもするようになった。
 東大阪に通い始めて10年が過ぎたころのことだ。ある社長から「先生の研究は何のためや。10年たっても、わしらの環境は全然変わらへん」と言われた。
 論文に何を書けばいいのかわからなくなり、怖くなったが、「調査したことを、どうやって現場に返していくかを考えた」。中小企業の支援をする民間や行政の活動に参加した。新聞や雑誌、テレビの取材も受け、積極的に中小企業振興のための政策提言をするようになった。
 今、憂えるのは「中小企業の過疎化」だ。経営者の高齢化が進み、後継ぎがいる会社は少ない。大手の注文は海外に流れる。鋳造やめっき加工など、各社がそれぞれに技術を持っていても、1社だけでは仕事ができないのが中小企業だ。「生き残るには、大手企業から仕事をもらうだけではない新しいシステムが必要なんです」
 他の地域や産業と連携し、新しい製品や仕事を生み出せないか。4月から、東大阪市に事務所がある関西大産学官連携センターで非常勤で働きながら取り組むつもりだ。「『教授』の肩書ではないが、お世話になった多くの中小企業や地域の人たちにお礼ができれば」と話す。

 ●「再生の道」出版
 退職を前にした2月、これまでの論文や調査結果をまとめた著書「中小企業再生の道―東大阪30年歩いて見たもの―」を出版した。A5判414ページ、3千円(税抜き)。問い合わせは関西大学出版部(06・6368・0238)。
 (西村圭史)

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