嘆く書店、にぎわう温泉 ツタヤ図書館効果明暗

[文]東郷隆  [掲載]2013年10月02日

リニューアルオープンして半年が経ったが、図書館前の駐車場(約90台)は平日でも午後には満車になることが多い=武雄市武雄町 拡大画像を見る
リニューアルオープンして半年が経ったが、図書館前の駐車場(約90台)は平日でも午後には満車になることが多い=武雄市武雄町

開館半年で会見する樋渡啓祐市長(右)と高橋聡CCC・図書館カンパニー社長=武雄市図書館 拡大画像を見る
開館半年で会見する樋渡啓祐市長(右)と高橋聡CCC・図書館カンパニー社長=武雄市図書館

 リニューアルオープンから1日で半年が経った佐賀県武雄市図書館。当初目標だった年間50万人を9月末で達成し、市の観光名所になっている。一方、民業圧迫と開館当初から物議を醸してきた課題はどうなったのか。
 「メディアでも図書館と一緒に取り上げられ、県外の車も増えている」。笑顔で話すのは、図書館にほど近い、年間約33万人が訪れる武雄温泉の担当者だ。4月以降、1カ月の客が前年同期と比べて200~400人ほど増えたという。市によると、貸し出し利用者の割合でみると、31・7%が武雄市以外の県内、9・0%が県外からの利用だ。
 だが、「民業圧迫」の批判は根強い。
 物議を醸しているのが、指定管理者のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が発行するTカードを図書カードとして使え、自動貸し出し機を使うと1日1回に限り3ポイント(カード提携店で3円として利用可)が付与される点だ。
 「本の無償貸与は非営利で」と定めた著作権法に違反しているとの指摘があり、「図書館友の会全国連絡会」などは「カード提携店という特定企業への営業支援行為だ」と批判する。
 市側は「自動貸し出し機の使用による窓口業務省力化の協力への対価」と反論。文部科学省も市の説明に理解を示している。CCCによると、こうした批判に応える意味からも、ポイントを使える地元店を増やす取り組みをしており、開館前の4店舗から現在は8店舗に増えたという。
 一方、市内の他の書店の経営は厳しい。「図書館がオープンして売り上げは落ちた」。肩を落とすのは市内で本屋を営む男性だ。4月の売り上げが急に1割ほど減り、現在も横ばい状態。常連客も離れたといい、男性は客が図書館の蔦屋(つたや)書店に流れたと見る。
 1日の会見で樋渡啓祐市長は「はやっている書店はすごく工夫している。嘆いている書店は努力しているのか」。だが、男性は「場の魅力を上げる投資額が違いすぎる。対抗するのは無理だ」とこぼす。
 CCCは書店など販売スペースの改修費3億円を負担し、年間600万円の賃料を払っていることから、市は公平性を強調する。
 慶応大学の糸賀雅児教授(図書館学)は、図書館で本を売るシステム自体は評価するが、「他の書店は図書館という人が集まりやすい空間を使えない。行政による一企業への協力で、他の店が経営難になるのはおかしい」と指摘する。
 そもそも、CCCも商売を前面に出さざるを得ない事情がある。開館時間延長などで人件費が増える一方、運営委託費は従来より800万円減の1億1千万円。賄い切れない分を民業で補う。CCCによると、CD・DVDレンタルが伸び悩む分を、スターバックスや蔦屋書店の売り上げでカバーしているという。
 糸賀教授は「売り上げを重視しなくても安定して運営できる仕組みが大事。市はCCCへの委託費を増やすことも考えては」と話す。

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