空想の地図、本にしました 第8―3訂 正確さ求め修正

2013年12月10日

「地理人」こと今和泉隆行さん。空想地図「中村市」は常に携帯している

 小さいころ、自分勝手な地図を描いた人は多いはず。でも、大人になっても続け、本まで出す人は、まずいない。『みんなの空想地図』(白水社)を出した通称「地理人」の今和泉隆行さん(28)くらいだ。
 始まりはバスの路線図だった。幼少期、父親が連れて行ってくれた「バス・トリップ」。近所のバス停から終点まで行き、戻ってくるだけの旅。移り変わる風景や見知らぬ人の会話が楽しかった。空想のバス路線図に始まった「密室趣味」は、架空の建物や交通を含む空想都市の地図づくりへ進んでいく。
 小学校の同好の友人名が由来の「中村(なごむる)市」の地図は現在「第8―3訂」版。著書では、初期の手書き地図時代の苦労から、パソコンソフトを使い、道路や施設、等高線などを別々に描いて重ねる手法に至るまでを自伝風につづっている。
 意外なのは空想なのに「正確」なのだ。架空の街なら好き勝手に描けばいいのに、都市の規模に見合う小中学校数や高速道路の位置など、修正を加え続ける。
 「1人では生きられないから、人と一緒に生きられる街を夢想します。一から都市のロジックを考え、住んで便利な、日常感ある地図を目指しているんです」
 人づきあいを好まないせいで「密室趣味」になごんでいるのに、人見知りではなく、外に出るのは大好き。「バスもそうですが、街のカフェなど、人がざわざわしているけれども、それでも干渉されずに過ごせる公共空間が心地いい」
 著書は地図好きよりも都市計画関係者などの注目を集め、すでに版を重ねた。一方で本人は、親和性の高そうな、鉄道マニアや街散歩好きとは距離を置く。
 「彼らはつきつめていくと、狭いところに寄っていく。でも僕はどんどん俯瞰(ふかん)していきたい。他の都市要素もバランスよく観察したいから。最近は同好の士も多いので、外国の地をどうにかしようと思います。どの街のインフラも同じようになってきた日本とは異なる、異国の街の空想地図を考えていきたい」

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