姫野カオルコさん「親指シフトキーボードに支えられ」 直木賞受賞会見

2014年01月17日

直木賞を受賞し笑顔で記念撮影に応じる姫野カオルコさん(左)と朝井まかてさん=東京都千代田区の帝国ホテルで

受賞の喜びを語る姫野さん=東京都千代田区の帝国ホテルで

最後のコメントを求められ熟考する姫野さん=東京都千代田区の帝国ホテルで

 第150回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が16日、東京・築地の料亭「新喜楽」であり、直木賞に姫野カオルコさん(55)の「昭和の犬」(幻冬舎)が選ばれた。「受難」で初めて候補になって17年、5回目の挑戦で受賞が決まった「孤高の作家」は、緑のシャツに黒のトレーニングウエア、首にはタオルを巻いて晴れの会見に登場。表彰台のアスリートのように居並ぶカメラに向かって笑顔で手を振り、質疑応答では飄々とした受け答えで会場を沸かせた。

直木賞受賞の一問一答はこちらから【朝井まかてさん】
芥川賞受賞の一問一答はこちらから【小山田浩子さん】

――受賞の連絡を受けた時は何をしていたのですか?
 ジムでストレッチしてました。次にエアロビクスのレッスンの予定だったんですけど、ドライアイで目が痛くて、お医者さんにもらった目薬を忘れたと思っていったん外に出たら、(受賞連絡の)電話が鳴りました。
――その時はどんなことを感じましたか?
 読者のおかげだな、と思いました。
――なぜそのままの格好で会見に?
 時間がなかったから。「できれば8時までに来て下さい」と言われたので。あと、私はベストジーニスト賞にすごいあこがれがあったんですけど、あれがもらえるのは有名な人なので、この服装で来て「ベストジャージスト賞」を自分でもらっておこう、と。
 ――過去4回候補になり「私は前夜祭作家」と言っていました。受賞後は何と呼びましょうか?
 ……ベストジャージスト賞作家。(場内爆笑)
 ――「すっぴんは事件か?」というエッセイを書いておられます。今日は晴れの日なので少しはお化粧も?
 どこまでを言うんでしょう。ファンデは塗っていません。マスカラも塗ってません。
 
――選考委員の代表会見で浅田次郎さんが「4、5年たつと候補になるので『オリンピック候補』だ」と言っていました。表彰台に上った気分は?
 いま角膜に傷がついていて、すごくまぶしくて、みなさんのことがよく見えません。ノミネートされるたびにとてもうれしかったです。アーティストとしてはノミネートがうれしい。受賞すると本が売れるので、ビジネスマンとしては受賞がうれしいです。
 ノミネートされると会見があるんですけど、最初の時は来て下さる記者の方が自分よりも「お兄さん」「お姉さん」という感じだったんですね。それが「先輩」って感じになり、次は「同級生」くらいになって、その次は「後輩」に。この間は「私の母が姫野さんと同い年で……」っていう方も(笑い)。だんだん来て下さる方が自分より若くなって、そういう流れは感慨深いものがあります。
 ――ジャージー姿はベストジャージスト賞を狙ってとのことですが、首のタオルは姫野タオルコという名前を狙った?
 NHKの取材の方には申し訳ないのですが、ジャージーもタオルもナイキでそろえてきました。色も合ってると思って。……いまのそれ、笑うところだったんですよね。タオルコとカオルコで。みなさん笑わなかったですよね。スベりましたね。(場内爆笑)
 
――では、作品についての質問も。犬で昭和史を描こうと思ったのはなぜですか?
 犬と猫が好き。犬好きの担当編集者とどんな犬を飼っていたかという話になり、歴代の飼い犬を思い出していたら、自動的に昭和33年ごろからの話になった。
 ――ご自身では何犬がお好きですか。
 ……雑種。
 
――出身地の滋賀県を描いた作品で受賞しましたが、滋賀に対する思いは?
 高校野球で優勝したことがない県のひとつです。楽屋で聞いた話ですが、直木賞受賞も滋賀からはなかったそうです。
 滋賀県に対する思いは、いつも美人の子と一緒にいて目立たない女子が合コンに行った感じ。というのは、京都がそばにあって、いつもいいところを全部持って行かれるから。
 
――今回の本の略歴に「文学界で特異な位置に立つ」とある。今日も浅田さんが「孤高の作家」「誰にも似ていない」と評していた。そういう立ち位置にいるのは大変だと思うが、なぜできるのか。
 ひとりっ子……鍵っ子でひとりっ子だったんで……って、そういうことじゃないですね。……団体行動が苦手だったから、じゃないかなぁ。
――流行の文体にひかれるというようなことはありますか。
 はやりのものの知識や情報がないんです。それに加えて、そういうものを自分で入れないようにしているところがあるんですね。あんまり振り回されないようにしようと思って。
 
――初候補から受賞まで17年。この間を振り返っていただけますか。
 ……質問が大きすぎです。
 さっき言ったように、来て下さる記者がどんどん若くなっています。本が売れる時代ではなくなり、特に私の本は売れ線じゃないので、ほんとに細々とした生活なんですね、経済的に。そのすごく細々とした生活で細々と書いてきたんですが、くじけそうになる時も、読者の方が支えてくれた。本を買う一般の読者の方だけでなく、「一読者として好きです」と言って下さる担当編集者の方も含めて、私はすごく読者に恵まれました。どんな時も、読者が支えてくれました。それを一番強く思います。
 あと、道具としては、親指シフトキーボード。心の中で思ったことを、そのまま日本語のリズムを壊さないようにつづってくれる。助かっています。
 
――今後はどういう方向に?
 小学校6年生の時に徒競走で1等賞を取った以外、賞というものとは無縁でした。今回受賞し、このような場所で「私は賞をいただきました」と言える機会をいただき、これからも自分のペースで書いていっていいんだなって思いました。その時その時のマイブームに合わせて、いろんな作風の作品を書いていきたいと思います。
 ――独自のスタイルを貫いて来たが、受賞作はより広い読者を意識したように思う。今回工夫したことは?
 特に意識的に工夫はしていない。読者としては、いつもいつも本を読んで、すごくたくさん本を読んで、本を読むのが普通、というのではない人を想定しています。
――浅田さんの選評に「今回は姫野さんの作品に直木賞がねじ伏せられた。頭が下がった」という言葉があった。この言葉をどう思うか。150回目の直木賞に感じることは。
 選評を全部聞いていないので、ちょっと……。あんまり作風が直木賞っぽくないということですかね。ちゃんと聞いてみないとわかりません。
 
――ジムで体を鍛えている理由は?
 別にジムでバーベルをあげたりしてるんじゃなくて、踊ってるんです。ジャズダンスとベリーダンスとラテンダンス。筋トレもしますが、それは踊るときに体幹がずれたりするとよくないので、筋肉をつけるため渋々やっています。お酒飲んで勢いをつけて書く方がいらっしゃいますよね。それに似ている。動いてワーッとなって、その勢いを借りて書く。仕事の一環で踊っているんです。(「まさか仕事場でも踊る?」)ええ、しますよ。今は投稿動画サイトで基本ステップが見られるので、わからなかったところは書斎でそれを見て練習して汗をかいてから書いてます。
 
――以前「小説を書くなんて社会人としてダメ人間だと思う」と言っていました。ペンネームも「ダメ人間っぽくていい」と。今でもそう考えていますか?
 基本的にそう思っています。本を読んだりものを書いたりしないですむのなら、その方が幸せだと思います。
 
――最後にひとこと
 (神奈川県)相模原市で小5の女児が行方不明になり、無事戻ってきてよかったんですけど、ひとりで帰ってきた犬が何犬だったのかずっと気になってて……。マスコミの方ならご存じじゃありませんか?(会場から「柴犬です」)えっ、柴犬!? 本当ですか、それ。(「ええ、あまり言われていませんが…」)……そうなんですか。今のはどちらの方?(「日本テレビです」)そうですか。ああ、謎が解けてよかった!今日はどうもありがとうございました。

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