売れるから「嫌中憎韓」 書店に専用棚 週刊誌、何度も

[文]守真弓  [掲載]2014年02月11日

東京・神保町の三省堂では、中国や韓国に関する本と並び、太平洋戦争を振り返る新書も置かれている 拡大画像を見る
東京・神保町の三省堂では、中国や韓国に関する本と並び、太平洋戦争を振り返る新書も置かれている

表紙画像 著者:室谷克実  出版社:産経新聞出版

 「嫌中憎韓」が出版界のトレンドになりつつある。ベストセラーリストには韓国や中国を非難する作品が並び、週刊誌も両国を揶揄(やゆ)する見出しが目立つ。
 東京・神保町の大手「三省堂書店」。1階レジ前の最も目立つコーナーに刺激的な帯のついた新書が並ぶ。
 「これでもまだあの国につき合いますか」「あの国に学ぶことなど一つとしてない!」「どうしてこの民族はこんなに自己中心的なのだろうか」
 同書店では昨年秋ごろから日本を賛美する内容の本と並んで、韓国や中国を批判する内容の本が売れ始めた。大月由美子主任は「店舗の売り上げに占める割合が大きくなり、専用のコーナーを設けることになった」と説明する。
 三省堂だけではなく、多くの書店が、こうした本を集めたコーナーを設け始めており、「嫌中憎韓」は出版物の一ジャンルとして確立しつつある。
 今年に入ってから既に、新書・ノンフィクション部門の週刊ベストセラーリスト(トーハン)のトップ10には『呆韓論』『侮日論』『噓(うそ)だらけの日韓近現代史』の3冊が登場した。昨年の同時期には1冊もなかった。
 中でも『呆韓論』は昨年12月5日に発売されてから2カ月弱で20万部売れ、7週連続でトップ10入りした。産経新聞出版の担当者は「想定をはるかに超える売れ方だ」と話す。読者からは「韓国がなぜあそこまで反日になるかよく分かった」などの声が寄せられているという。
 05年に発売され、シリーズ累計100万部を売った『マンガ嫌韓流』は22日、新たにムック本を出す予定。担当者は「大手メディアが韓国の悪い部分を報じず、国民の中にたまっていた不満をすくいとったのでは」と分析する。
 こうした傾向は、週刊誌も同じだ。
 昨年1年間に発行された週刊文春全49号のうち、見出しに「中国」「韓国」「尖閣」「慰安婦」などがついた記事は48号に上った。週刊新潮は49号のうち37号、週刊ポストは44号のうち38号、週刊現代は46号のうち28号だった。
 記事の内容や大きさは若干異なるがほとんどの記事が両国や、両国の指導者を非難する内容だ。「売れるのでやめられない。政治家スキャンダルなどと違い、国外のニュースを紹介するだけなので訴訟リスクが極めて低いことも記事を増やす要因だ」。30代の週刊誌記者は明かす。
 週刊誌が中国の記事を求められるようになったのは2010年の尖閣諸島沖での漁船衝突事件の頃から、韓国は12年の李明博大統領(当時)の竹島上陸の頃からという。
 新しい動きもある。昨年末に編集長が交代した週刊現代は1月末の号で嫌中憎韓路線を転換。「『嫌中』『憎韓』に酔いしれる人々は本当に武器を取るつもりか」と訴えた。
 若手記者からは異論もあったが、「感情的な議論でなくきちんとした検証が必要。面白いだけでなく、ためになる週刊誌でなければならない」(同誌記者)と決めたという。売り上げは「落ちなかった」という。
 メディア批評誌「創」の篠田博之編集長は「週刊現代は思い切った方向転換だったが、それが長期的方針になるかはまだわからない。売れる限りブームは終わらないだろう」と分析。慶応大の大石裕教授(ジャーナリズム論)は「週刊誌などだけがブームを作ったわけではない。メディアが日韓・日中の対立ばかりを報じ、日常的な交流のニュースを捨象してきたことも根本にある。報道全体の検証が必要だ」と話す。

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