山のバイブル、世界へ 「日本百名山」愛好家が英訳本

2014年12月21日

英訳された「日本百名山」の表紙=ハワイ大学出版局提供

マーティン・フッドさんと山田晴美さん夫妻=山田さん提供

 この日本一の山について今さら何を言う必要があろう――。そんな書き出しで富士山の章が始まる「日本百名山」(深田久弥著)を、英国人の登山愛好家が英訳した。来年1月にも、ハワイ大学出版局から「One Hundred Mountains of Japan」のタイトルで出版される。1964年の初版刊行から半世紀を経た今も愛されつづける「山のバイブル」が、世界でも読まれることになる。

 スイスの国際決済銀行に勤めるマーティン・フッドさん(57)が2003年に英訳を始めた。日本に留学したり働いたりした経験があり、日本でも登山や山スキーを楽しんだ。「日本語を忘れないように」と思い、日本で初めて登った白山(石川県)の章から翻訳を始めた。

 《日本人は大ていふるさとの山を持っている。》

 《A mountain watches over the home village of most Japanese people.》

 石川県出身の深田にとっても、白山は「ふるさとの山」だった。

 マーティンさんが、友人で福井県の大学で英語を教えている山田晴美さん(55)にメールで訳文を送ると、「他の章も読みたい」と言われた。「英語が詩的で美しく、しかも著者の味が残っていた」と山田さんは振り返る。それから3年間、毎晩2ページずつを訳し、山田さんに送り続けた。

 作品中で多く引用される「万葉集」「奥の細道」といった古典の英訳には苦労したが、感銘も受けた。深田が富士山について「おそらくこれほど多く語られ、歌われ、描かれた山は、世界にもないだろう」という記述にも共感した。「『日本百名山』は単なる山ガイドではない。日本の歴史や日本文化は、山なしでは語れないことが分かる。欧州でこんな本は読んだことがない」

 古典の解釈では山田さんに助けられた。親交を深めたマーティンさんと山田さんは今年5月に結婚。2人で完成した英訳を出版しようと、深田さんの長男・森太郎さんの了解を取り、国内外の複数の出版社に持ち込んだが断られた。

 しかし、ブログへの書き込みを目にした米国人研究者が、日本関係の学術書を豊富に扱うハワイ大学出版局を紹介してくれた。同大出版局は「人類学、宗教学、地理学などを学際的に網羅する『日本百名山』をすばらしい訳で表現している」と評価した。マーティンさんは「日本人が育んできた自然との関係を、海外の人が深く理解するきっかけになってほしい」と話している。

 英訳本はネット通販大手「アマゾン」で販売を予定しており、現在予約を受け付けている。

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