(オススメ 編集部から)日本の近代を見つめる

2017年03月12日

 大正初期に地方新聞で連載された佐藤紅緑の小説『毒盃』が、約100年を経て単行本になった(論創社・3456円)。主人公は日清・日露戦争期の海軍エリート艦長。ロシア、日本、中国を舞台に、彼の人生につきまとう不条理な宿命を、キリスト教の道徳観も交えつつ、活劇のように描いた通俗小説だ。軍国主義や愛国心、女性の不自由さなどが、当時の空気感と共に伝わってくる。
 一方、「教育勅語」を唱和させる幼稚園が存在する現代日本。戦後日本の民主主義とは何だったのか。天皇の「お言葉」をきっかけに、その核心を明快に示したのが政治学者の片山杜秀と宗教学者の島薗進による対話集『近代天皇論』(集英社新書・821円)だ。二人は、戦前の天皇を中心に据えた「神聖国家」への回帰をめざす勢力の言動に危機感をつのらせ、戦後の「象徴天皇制」「民主主義」の意義を今こそ本気で考えようと説く。近代史の課題を直視した、面白くて示唆に富む一冊。

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