綾つじワールド、30年の変遷たどる 「人間じゃない」

2017年03月22日

綾つじ行人さん

 京都在住の作家、綾つじ行人(あやつじゆきと)さん(56)がデビュー30周年を迎え、単行本未収録作品を集めた新刊『人間じゃない』(講談社)を出した。「新本格」ミステリーブームの先駆けとなった「館」シリーズをはじめ、過去の作品とつながりがある中短5編が並び、綾つじワールドの変遷を楽しめる作りになっている。
 「図らずもデビューから5年くらいおきに書いた作品が並んでいて、作風が変わったところと変わらないところが両方わかるのがいいですね」
 1987年のデビュー作『十角館の殺人』は、孤島の奇怪な館で起きる連続殺人の謎を解くミステリーだった。大時代的な道具立てに眉をひそめる向きもあったが、謎解きを重視する本格志向は若い世代を中心に受け入れられ、ミステリー界に「綾つじ以降」という言葉を生んだ。
 ミステリーの印象が強い綾つじさんだが、今回の作品集は謎解きと怪奇・幻想風味が相半ばしている。冒頭の「赤いマント」は館シリーズ第4作『人形館の殺人』の後日談、2作目の「崩壊の前日」は95年のホラー小説集『眼球綺譚(きたん)』の流れにある短編だ。
 「僕の中に怪奇・恐怖志向とロジック・トリック志向は両輪としてあるんです。楳図かずおさんの漫画に影響を受けたせいか、むしろ怪奇・恐怖の方がルーツに近い。作家になり、短編の依頼が来るようになったのを機に、かねて書きたかったホラー小説を書くようになったんです」
 謎と怪奇の行き来は、二つの作品「洗礼」「蒼白い女」にも表れている。前者は犯人当て小説集『どんどん橋、落ちた』、後者は京都らしき場所を舞台にした怪談集『深泥丘奇談(みどろがおかきだん)』の番外編にあたる。ともに綾つじさんとおぼしき、もの忘れのひどいミステリー作家が語り手だ。「それぞれ30代と40代に書き始めたのですが、私小説風に書いてみて、これは僕の文体としてありなんだという文体の発見がありましたね」
 最後に収めた表題作は過去に漫画原作として作ったプロットを小説にした作品。近年では、学園ホラー『Another』が漫画やアニメになり、若い読者が綾つじ作品にふれる入り口になっている。
 「意外と館シリーズも読んでくれています。考えてみればデビュー作がそのまま途切れないまま残っているのは作家としては幸せですよね」
 さて、気になるのはその「館」シリーズの最新作。かねて10作は書きたいと公言しているが、9作目の『奇面館の殺人』から5年が過ぎた。「諦めていませんので、気長にお待ちいただければと思います。僕自身、はやいところ10部作終わりましたと言いたくてしかたないんです」

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