10代に寄り添い、すくい上げるものを 辻村深月

2017年06月07日

辻村深月さん

 作家、辻村深月さんの『かがみの孤城』(ポプラ社)は、中学生が不思議な世界に誘い込まれる長編小説だ。20代は少年少女のミステリーを多く手がけたが、近年は大人を描くことが多かった。「そろそろ戻りたくなった」という原点のような青春ミステリーだ。

 「10代を書けなくなってしまうのではないか、という不安がありました」。いま37歳。「自分の中の10代の源泉のようなものが尽きているのではないかと」。それが書き始めると無我夢中に。後半の書き下ろしは「久しぶりのライターズハイになった」という。「中学生たちが勝手に動いてくれた。楽しかった」

 中学1年のこころは、教室に居場所がなく、学校を休んでいる。ある日、自室の姿見が光り始め、手を伸ばしたこころは鏡の向こう側へ。

 学校に行けなくなった理由は、悪口を言われたこと。小さな出来事が苦しい。「大人になると流せることも、人生経験が乏しい子たちには一つ一つが大事件。それを丁寧に描くことが10代を書く意味かもしれない」。いじめや不登校といった言葉をあてはめたくはなかった。「名前を付けられない何かをすくい上げるのが小説だと思うから」

 中学時代を振り返れば、家と学校の往復で、それでも日々は濃密だった。「いろんなところに行っていた気がする。何でだろうと考えたら、本を読んでいたから。本を通して違う世界に行っていました」。大人になって物語を作る側になった。「中学時代の自分に軽蔑されない小説を書きたい」と心がける。「何を書いていても10代の子たちに寄り添うものでありたい」

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