(オススメ 編集部から)もう一つの満州

2017年06月18日

 『異郷のモダニズム 満洲写真全史』(国書刊行会・3780円)という写真集が出ている。名古屋市美術館の同名展(2017年6月25日まで)の図録でもあるのだが、「満州の写真全史」と聞くと、この人工国家の正統性を視覚に訴える、つまりプロパガンダ的な写真が次々に登場するのでは、と想像してしまう。だがその予想は、大きくはずれる。
 第1章には、街や暮らしを淡々ととらえた1920年代の記録写真的なものが並ぶ。これはまあ分かる。驚くのは、30年代の写真を収めた第2章。ソフトフォーカスに光と影、水蒸気の効果を生かし、印象派やミレーの農耕画のような、絵画主義の写真が続く。大陸へのロマンを誘う効果もあったようだが、そもそもこんな芸術写真がかの地で撮られていたことに驚く。
 しかし第3、4章では当初の予想通りに、「伸びゆく満州」風の、スタイリッシュだが、宣伝に貢献する写真が並ぶ。芸術写真の後に見るだけに、一層ほろ苦い。
 (編集委員・大西若人)

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