(オススメ 編集部から )サバイバル登山家の小説

2017年07月23日

 サバイバル登山家の服部文祥さんが、小説『息子と狩猟に』(新潮社・1728円)を出版した。装備を切り詰めて食料も山の中で調達する「サバイバル登山」を敢行してきた。一昨年、文芸誌「新潮」に「K2」を発表。昨年同誌に発表した表題作と2作を収めた本書は、小説家としての初の単行本だ。
 「息子と狩猟に」は、小学生の息子に鹿狩りを体験させようと山に入った父親と、振り込め詐欺集団のリーダーの物語が並行して進む。狩猟には特別な興奮があるが「自分という人間をひととき殺すこと」という父親の独白には、狩猟を実践している著者にしか書けない重みを感じる。極限状態で命や生死について悩み迷いながらも、その瞬間瞬間の行動を自ら選択していく主人公らはたくましい。
 今月のイベントで、ある種の後ろめたさを感じつつ自分の命を優先させる葛藤を語った著者。実際に3人の子を持つ父親でもあり、主人公が息子の成長を願って注ぐ温かなまなざしも印象に残る。(真田香菜子)

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