人気作家5人、リレーでミステリー 宮部→辻村→薬丸→東山→宮内 「宮辻薬東宮」

2017年07月30日

前列左から反時計回りに、宮部みゆきさん、辻村深月さん、薬丸岳さん、東山彰良さん、宮内悠介さん=東京都内

 人気作家5人が短編をバトンリレーする、珍しい試みの本が出た。ミステリーのアンソロジー『宮辻薬東宮(みやつじやくとうぐう)』(講談社)。不思議なタイトルは、宮部みゆき→辻村深月→薬丸岳→東山彰良→宮内悠介、というリレー順の頭文字だ。
 スタートは宮部さん。「人・で・なし」はある家の謎めいた写真をめぐる物語。2番手辻村さんの「ママ・はは」は写真というモチーフを引き継ぎ、全く別の母と娘の関係に仕上げた。3番手薬丸さん「わたし・わたし」で事件小説になり、4番手東山さん「スマホが・ほ・し・い」で舞台は台湾へ。アンカーの宮内さん「夢・を・殺す」はプログラマーの世界を描く。そして宮内さんの結末は宮部さんの始まりへ。
 「ウロボロス(自らの尾をかむ蛇)のようにつながって戻ってきました。一番驚いたのが私」と宮部さん。舞台も登場人物も5人5様だが、共通するのはホラーテイストという点だ。後半の3人にとってホラーは初めて。「バトンを受け取ったら自分がイメージしていた人間の心の闇という怖さではなかった」と薬丸さん。それがかえって「新しい引き出しを開けるきっかけになった」という。「ホラーは必ずしも明確な答えがなくていい。そんな終わり方を思い切ってできて新鮮だった」という東山さんは中国の古典「聊斎志異(りょうさいしい)」を意識したそう。宮内さんは「東山さんのキーワードで、私には書けない小説になった。深い読書をする機会にもなりました」。
 アンソロジーは、複数の作家が一斉に同じテーマで書くことが多い。今回は前の作品を読み、次に渡すというバトンリレーで2年がかりとなった。「作家は基本的に1人だが、チームプレーも楽しい」と東山さん。「大人の部活動のようでした」という辻村さんは幸せそうだ。宮部さんは「何をピックアップして書き継ぐか、みんな個性が違う。その違いが豊かさになっています」。
 (中村真理子)

宮辻薬東宮

著者:宮部 みゆき、辻村 深月、薬丸 岳、東山 彰良、宮内 悠介
出版社:講談社

表紙画像

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