(オススメ 編集部から )都築響一が次に注目したのは…

2017年08月13日

 市井の人々の生活感あふれる居住空間を被写体にした『TOKYO STYLE』を皮切りに、秘宝館やスナック文化、寝たきり老人の独語、地方在住ラッパーのリリック(歌詞)など、批評の対象にならなかったニッチな事象に光を当て続けている写真家で編集者の都築響一さんが、次に注目したのは『捨てられないTシャツ』(筑摩書房・2160円)だ。
 部屋着として愛用し続けている草野球チームのロゴT、元カノとミラノで購入したタンクトップ……。編集者や自営業者ら70人の「捨てられないTシャツ」の写真に、自らの半生と、当該のTシャツにまつわる思い出が添えられる。
 「タバコ1箱分くらいの値段だった」など何げない描写になぜか胸を打たれる。「捨てられないTシャツ」を経由しなければ表に出てくる機会がなかったエピソードから垣間見えるのは、見知らぬ人の、それぞれが切実な人生だ。そこに文学の萌芽(ほうが)を感じずにはいられない。(板垣麻衣子)

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