現代文学を「読む・語る・動く」 東京大でシンポジウム

2017年08月16日

東京大「現代文芸論研究室」創設10周年を記念して開かれたシンポジウム

 「文学を読む・語る・動く」と題するシンポジウムが7月、東京大で開かれた。第一線で活躍する翻訳家や作家、文学研究者が次々に登壇し、現代の文学を縦横に語った。
 「読む」をテーマにパネル討論に臨んだ福嶋伸洋・共立女子大准教授はボブ・ディランさんのノーベル文学賞を引き合いに出し、歌や韻といった「読まれない」文学をもっと評価するべきだと指摘。「韻」を子供に説明するために自作した「かまどの中にはてっぱん/おいしくやけるよあんぱん」という詩を披露して、会場をわかせた。
 マイケル・エメリック・カリフォルニア大ロサンゼルス校准教授もこれに呼応するように、「読まない」ことの意味について問題提起。読書体験がまだ浅い子供に絵本を読み聞かせるときの反応を例に、読まない時間こそが文学の素地になるのではないかと語った。
 「語る」のテーマでは小説家の平野啓一郎さんと文筆家の千野帽子さんが、「動く」では西成彦・立命館大教授と今福龍太・東京外語大教授が登壇。作家の亡命について語った西教授は、アウシュビッツ収容所を例にとり「治外法権というものの持つ、悪夢的な意味合いを忘れてはいけない。ある国家の中で恐ろしい事態が生じても周りが介入できない状況は、無数に偏在している」と話した。
 シンポジウムは東京大の「現代文芸論研究室」創設10周年を記念して開かれた。創設初期の研究室を支えた翻訳家の柴田元幸さん、現在も専任教員を務める沼野充義・東京大教授、創設翌年から加わった野谷文昭・名古屋外国語大教授が顔をそろえ、これまでの歩みを振り返った。(柏崎歓、高津祐典)

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